地獄か楽園か (2/4)

『ん……』




パチッと目を覚ます。

昨日は疲れててご飯を食べてお風呂に入った後、すぐに寝ちゃったんだ…。




時計を見れば六時半。




『……学校…。』



まだ寝ぼけた頭で制服に着替え、洗面所に向かって歯を磨き、顔を洗う。また時計を見た時には七時になろうとしていた。


『……。』


鞄に必要な分だけを入れるとそのまま家を出た。朝ご飯はあまり食べない。
お腹も空かないし、なんか、気持ち悪くなるから……




タタタッと胸に鞄を抱きながら走る。
別に学校が遠い訳じゃない…。
家から歩いて15分ぐらいの所に学校がある。



だけど毎朝寄り道をしてから学校に行く私はこのぐらいの時間に家を出ないと間に合わない。




時計を見る。



『良かった…間に合った……』



ほっと息を着く。
今いるのは商店街の建物と建物の間にある路地裏。



ここである子を待っている。何時もこの時間になると路地裏に現れる子。




『………どうしたのかな?』




路地裏で待つこと5分。あの子を待っているとニャー!と聞き慣れた鳴き声がした。



『!ネコさん…』

歩道の向こう側に足を怪我したのか引きずりながら来る黒猫の子猫。
そう、この子が透の待っていた子。


透は毎朝学校に向かう前にこの路地裏に来て子猫に餌を与えていた。




『!ネコさん、怪我…してる…。』



鞄を持ち早く手当をしなきゃ、と歩道の反対側にいる子猫の元に行こうとするがそれよりも先に子猫の方が私の方に向かって歩いて来る。



私を待たせていた事に慌てているのか一生懸命、怪我をしてる足を引きずって車道に入り、私の方に来ようと頑張っている…。




そんなの、大丈夫なのに……



子猫の必死さに私は知らずうちに拳を握る。





『ネコさ………!!』




ネコさんが今歩いている車道の向こうからトラックが近付いて来ていた。



『!?ネコさん!駄目ッ!こっちに来ちゃ駄目ッ!!戻って!!!』




産まれて初めて大きな声を出して叫ぶ。喉が痛い、けどこのままだと…。


子猫に向かって叫ぶものの、人間の言葉なぞ知らない動物には意味を成さない。




もうトラックはすぐそこまで来ていた。
トラックの人も子猫に気付いていないのかスピードを落とさない。
このままじゃ、



このままじゃ………
















『ッ!!ダメぇぇぇぇぇええぇぇぇぇ――――――――!!!!!!!!!!』



透の高い声が車道に響き、




「っ!?」







―キキキィィィィ!!!!!!!















――ドンッ



身体に走った強い衝撃と痛みに、透の視界は閉ざされた。




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(ニャーン)



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