08





「ス、スパナ!違うんだよこれは…!」

「…………。」


僕が声をかけてもじっと見返してくるだけ。

これはかなりまずくないか…?


「あっスパナ!仕事終わったの?」


名前は気づいてない?でもいつもの彼女ならスパナの異変に気づかないはずがないんだけど。今はスパナに会えた嬉しさで上手く頭が回っていないんだろう。


「………スパナ?」


気づいたのはスパナに駆け寄ってから。


「…………。」

「えっスパナ!?何処行くの!?…っと正一話聞いてくれてありがとねっ」


腕を引かれながら振り向く名前。…ここで僕の名前を出しちゃ逆効果じゃないか…。

部屋から出ていく瞬間、スパナの冷たい視線が突き刺さった。

かなりヒヤッとしたけど、逆に安心もした。

幼馴染みの彼女をスパナは思っていた以上に大事に思っている。



…にしても、今のは怖かったな。

後で何を言われるかと思うと…。


「またお腹痛くなってきた…。」









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「スパナっ…ねぇどうしたのっ…!?」


声をかけてもやっぱりスパナは無言で何も答えてくれない。

ついにはかなりの速さでいつもの作業場についてしまった。


「スパ…「ウチは油断しすぎてたのかもしれない」…え?」

「名前がウチを好いてくれてるのは明らかだったから、それに甘え過ぎてた。目を合わせなくてもデートに行けなくても、名前がウチから離れることは無かったから」

「スパナ、もしかして」

「すまない。あんたと正一が一緒にいるとこ見て、嫉妬した」

「…ッ」

「名前に触れるな、名前もどうしてそんな嬉しそうな顔をする、そう思ってしまってた。あんたと正一は幼馴染みで仲がいいことは前から知ってたのに。本当にすまな…「スパナっ!」


もう一度謝ろうとしたスパナにおもいっきり抱きついた。

嬉しくて嬉しくて。

だってスパナが嫉妬してくれるなんて思ってもみなかったから。


「…怒ってないのか?」


「どうして怒るの?嬉しいに決まってるじゃん!」


満面の笑みを向けるとスパナは安心したのか私の背中に手を回してきた。


「そうか。良かった。……少し、充電させてくれ」


そのままスパナは顔を私の首もとに寄せ、黙り込んでしまった。











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「正一」

「うわぁ!?」


スパナにどう謝ろうとかなんて言ったらいいんだろうとかお腹を押さえてうんうん唸ってたら本人がひょこり顔を出した。


今ので一、二年くらい寿命が縮んだんじゃないだろうか。


おまけに謝ろうとしたら逆に謝られて、さらに頼みがある、なんて言われてしまった。









「…ええっ!?それ本当かい!?」





その頼み事を聞いた僕の寿命はさらに縮んだ気がする。









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