最近私はおかしい。
今まで芸能人とか興味すらなかったのに、モデルだという彼の事が頭から離れない。
今日は学校で黄瀬さんを見かけた。彼はたくさんの女の子達に囲まれて笑顔を浮かべている。
どうしてこんなにも胸がもやもやするの。
「あ、名前っち!」
「──っ」
彼は私に気づいて手を上げてきたけれど、私はどうしようもなく苦しくなってその場から逃げ出してしまった。
───────
「名前っち…!」
追いかけようとするも人混みでなかなか前に進めない。後ろで女の子達が何か言っていたようだけど俺はそれどころじゃなかった。
「─はぁっ…」
やっと抜け出せたと思ったら名前っちの姿はもうどこにも見当たらない。しばらく辺りを探したけれど、見つかる様子はなかった。
「どこ行ったんスか…」
いつもと違った名前っち。一体どうしたんだろうか。
…もうすぐチャイムが鳴る。
俺は仕方なく教室に戻った。
放課後なら
会えるっスよね……?
──────
ーーー
「名前っち…!」
いつものように先輩に断りをいれ、花壇へと向かう。
「黄瀬、さん」
目が合うと
先程はすみませんでした
そう言って頭を下げられる。
嫌われたわけじゃないってわかってホッとしたけれど、俺は別に謝って欲しいんじゃない。
「なんでっスか」
「え…?」
「なんで、逃げたりしたんスか」
「そ、れは…」
続きを促すように黙っていたら、数秒後に弱々しい声が聞こえた。
「わかり、ません。自分でもよくわかっていないんです。ただ、女の子に囲まれている黄瀬さんを見たらその場にいたくなくなって…」
「……は?」
今彼女は、何て言った…?
「すみません。おかしいですよねこんなの…」
「名前っち」
「はい?」
「それ、まさか嫉妬っスか?」
「……っ!?」
一気に赤くなる頬。
「え、」
「…っもう今日は帰ります!さようなら黄瀬さん!!」
「名前っちちょっとまっ…」
止める間もなく彼女は鞄を胸に抱え、去っていった。
もしかして、名前っちも同じ気持ち──?
そう思ってしまったらもう止まらない。
俺は決意を新たにした。
善は急げ。
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