Look at me! | ナノ





ある日、黄瀬は主将の笠松からランニングを命じられ、学校の周りを走っていた。


「うぅ…笠松先輩なんで、女の子に手を振ったくらいで外走ってこいなんて言うんスか〜」


今はいない笠松を思い浮かべながらも黄瀬はしっかりと足を進める。なんだかんだできちんとこなす黄瀬だ。

10分程たった頃、黄瀬はふと足を止めた。

「なんか、いい匂いがする…」


辺りを見回してそれが発されている所を探す。

見つけたのは、放課後で部活動をしている人達以外でほとんど人がいない中道端で凛と咲き誇っている色々な種類の花。


「……こんなとこに花なんか咲いていたっスかね…」


しばらくそれをぼうっと見ていると、背後から声が聞こえた。


「…あの、何か?」

「え?」


振り返れば、自分より頭2つ分程低い女の子の姿。
固まっていると彼女はもう一度、しかし少しだけ言葉を変えて繰り返した。


「その花に何かありました?」


繰り返されてもなお意味が分からず沈黙していると、ずっと花を見ていたようなので…、と彼女は言った。その台詞にやっと黄瀬は納得する。


「こんなとこに花が咲いてるの知らなくて少し考えてただけっス。それに、凄いいい匂いだったし」

「そう言っていただけると嬉しいです」

「?どういうことっスか?」

「ここにある花は私が植えたものなんです」

「えっ君が!?」

「はい」


何かおかしいですか?そう言いながら首を傾げる少女に首を振って否定する。


「……ところで、みたところバスケ部のようですが、練習に戻らなくても良いんですか?」

「あー…今はランニング中でーって…えっ!?君俺の事知らなかったりする!?」


焦る黄瀬に対して彼女の表情は一環して変わらない。


「…すみません」

「まじっスか…」

「それであの、あなたの名前は…?」

「黄瀬、涼太っス…」


名を名乗りながら黄瀬は意気消沈する。今まで、男はまだしも女の子で自分の事を知らない子はいなかったのだ。


「黄瀬、涼太さん、ですか…どこかで聞いたことあるような…」

「ほんとっスか!?」


目を輝かせる黄瀬だが、


「やっぱり勘違いでした」


この言葉に再び落ち込む。


「……で、君の名前は?」

「私は名字名前です」


聞けば同じ学年。それなのにお互い顔も知らないとは驚きだ。

なんにせよ、黄瀬にとって名前という少女は不思議な存在だ。

彼女の纏う雰囲気も。花の事も。

いつかこの謎を全て解き明かしたい。


黄瀬はそんな興味本位で、彼女に近づき始めた──。







prev / next

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -