02




それから数日後、黒子は件のマネージャーへの暴力と嫌がらせ、部室を荒らしたことでバスケ部を退部になった。全部黒子は身に覚えがないことだった。あれはあのマネージャーの自作自演なのに、どうして僕が退部させられたんだろう。顧問の先生は、黒子の話を聞かなかった。おそらく昨日のうちに、赤司か誰かが先生に事の経緯を説明したんだろう。ともかく黒子はバスケ部を退部になった。いわれのない罪を着せられて。
昨日のバスケ部の件は次の日には学校中に広まっていた。黄瀬の幼なじみのマネージャーは黄瀬同様に見目がよく、人気もあった。そのせいで黒子はまわりから蔑視され、いじめをうけるようになった。
机の上には仏花が添えられたり、教科書やノートをボロボロにされたり。元々影が薄いのも相まって、あまり暴力を受けることは少なかったが、無いわけではなかった。黒子の身体には、見えないところにたくさんのあざがある。罵詈雑言を浴びせられるなんて、もう日常茶飯事だった。どこからアドレスが漏れたのか、迷惑メールが毎日のように来るので携帯の電源は終始切っていた。
それでも親に心配をかけたくなくて、黒子は毎日学校に通っていた。
頼れる人も、相談できるほど仲のいい人もいなく、黒子はだいぶ参っていた。全中も終わって、あともう数ヶ月もすれば卒業だ。2月からはほとんど学校がない。あともう少しだからと一人で黙って堪え忍んでいた。




あぁ、やっぱり。
窓際の一番後ろのびちょびちょになった自分の机のまわりを見て黒子はため息をついた。あれからというものの、毎日のように机は荒らされている。ちょっと目を離した隙にカバンの中身をぶちまけられ、本のページを破られてしまったこともある。
今日はどぶからでも水を汲んできたのか、異臭が鼻を突く。まわりがクスクス笑いながらこちらを伺い見ているクラスメイトの視線が重くのしかかる。黒子はカバンを持ったまま、雑巾を取ると机を拭きはじめた。とたんに背中を蹴られ、制服にべっちょりと汚水がついてしまった。机の角がお腹に勢い良く当たって、思わず黒子は咳き込んだ。クラスメイトたちがそれをみて笑う。


「ちょっと男子ぃーやめたげなよ」


けらけらと笑いながら女子生徒が可笑しそうに言う。
ちくしょう。
心の中でつぶやく。
どうしてこんな目に僕があわなくちゃいけないんだ。僕は何もしてない。何もしてないのに、どうしていじめられなくちゃいけないんだ。
目じりに涙が滲んだ。
起き上がって、また机を拭く。掃除をしていると、その度に足がとんできて黒子は転んだ。


もう、どこでもいいから逃げ出してしまいたい。


あんまり辛いものだから時々黒子は、死んでしまいたいと思うようになった。実際にはカッターナイフを手首に宛てても引くことなんかできやしないし、自殺なんて考えるだけで恐ろしかった。それになにより、そんなことをしてしまえば今ひた隠しにしているものが明らかになってしまうのが黒子は嫌だった。
とりあえず高校は、帝校生がいなくてバスケがあまりさかんではないところに行こうと黒子はひそかに決めていた。




[ 3/7 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -