欲スレドモ、欲スレドモ
○月×日
最近体調が悪い、めまい、気だるさ、吐き気、
でも、これで良いのだ、この胎内に命が芽吹いているのだ。
検査薬では良い結果は出なかったが、そっちが間違っているのだ。
鬼道クンになんて言えばいいのだろう。
びっくりした顔を想像するとなんだかニヤニヤした。
△月□日
最近胸や腹部が膨らんできている、子供が生まれる準備をしているのだ。
生まれてくるであろう赤ちゃんへの愛しさが溢れ、流れ出してしまいそうだ。
それでもいいと思った。
鬼道クンに言ったらどういう反応をするのだろう、喜んでくれりだろうか。
赤ちゃんが生まれたら鬼道クンと籍をいれて、しあわせになりてぇなぁ。
その日は雨がザブザブと降っていて、本当にバケツをひっくり返したんじゃないかと思うほどだった。
最近、なんだかおかしかった不動が今日はより一層おかしかった。
「鬼道クン、赤ちゃんが出来たよ、鬼道クンの子供だぜ?」クスクスと笑いながら俺の手を自身の下腹部に添える。
訳が分からず、俺の手にあったコップは掌から滑り、落ちて、割れた。
ガッシャン!と大きな音を立てて割れたコップは沢山の破片となり飛び散った。
どうしようもなくなって俺は不動を力いっぱい抱きしめた。
「不動、俺に子供はいらない、お前がいればそれで充分なんだ。」
鬼道くんの腕は震えていてなんだか悲しそうだった、でも俺はもっと悲しかった。
瞳からとめどなく溢れ流れる体液はすべて流し出してしまってるように感じて、俺は止めようと頑張ったのに、涙は止まることを拒否したようにすべてを濡らし続けた。
俺は赤ちゃんが欲しかった。
俺と鬼道くんの子供が欲しかった。
子供を胸に抱きしめ、いっぱいの愛情を与えたかったのだ。
でも、俺は男で鬼道クンも男だった。
神様は俺に奇跡なんて与えてはくれなかった、不可能はやはり不可能なのだ。
その日を境につわりは無くなり、胸も腹も元に戻っていった。
俺は今日も鬼道クンの欠片たちを胎内に受け止める。目尻から零れ落ちた雫は生理的な物なのか死んでいく欠片への弔いなのかは分からなかった。
これが俺の罪への報いなのだろうか、重すぎる十字架に俺は潰れてしまっても良いと思った。
みちゅつゅん?へ愛を込めて!
ちゅみつゅんさんへのお誕生日プレゼントとなります!チビさん大好きですチビさん妊娠ネタとか難産でしたよチビさんもなんか書いてください妊婦あきおちゃん待ってます。
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