アイラブ!
生活感のまるで無い物の少ない不動の部屋で俺たちは話に花を咲かせていた。試合の話、チームの話、話題が尽きる頃には部屋は真っ暗になっていた。
「月が綺麗だ、」
窓から見える満月であろう月は雲が覆っていて、お世辞にも綺麗とは言えた物ではなかった。
「は?」
「月が綺麗ですね、というのがあってだな、どういう意味だか知っているだろう」
「……月、見えないんだけど」
目つきの悪い野良猫みたいな眼をぱちくりとさせて実に無邪気に答える
そうじゃなくてだな!とベッドに背を預け、自分のドレッドをぐしゃぐしゃとかきむしる俺をニヤニヤとベッドの上から見下ろしているコイツは本当に性格が悪い。その意味も、俺の気持ちも、全部分かっている上で焦らす。不動はそういう奴だった。
「じゃあ、どういう意味なんだよ」
分かりやすく言ってくれよ、
ほら、と言葉を即す。
「い、言えるか!」
どんどん不動の思う壷にはまっていることが分かる。
俺はたちあがり、ベッドの上の不動に覆い被さって、不動の柔らかいほっぺたを両手で挟んでふにふにとした唇に自分の唇を押し当て、唇を割るように舌を入れ、歯列をなぞり、思い思いの熱いキスをした。
「 」
不動は笑いすぎて酸欠になった。
俺は羞恥で全身茹で蛸みたいになった。
月を覆っていた雲はもう風に流され、黄金の月が煌々と輝いていた。
俺は不動の耳が紅く染まったことに気付いていた。
あいしてる!
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