ざあざあと大粒の雨が建物を叩きつける音が響いて。
他には何も聞こえてこない程に雨音だけが空間を支配する。
籠った空気と遠くから届く雷鳴が静けさを際立たせた。

「ナツたち…心配してるかな」

呟くように零れた声は寂しさを含んで、ぽつりと落ちる。
止む気配のない空を眺めながら溜息ひとつ、振り返ると突如視界に裸体が飛び込んできた。
突然のことに息を飲んで、次いで慌てて俯く。
視界に映る床へ水分を含んだシャツが投げられて。
重そうな音に見えない姿を重ねて頬が熱くなった。
ゆっくりと深呼吸をして、そろりと顔を上げれば、ぽたりぽたりと黒髪を伝って滴る雨粒を面倒そうに掻きあげたグレイが近づいてくる。

「どっちにしたって止むまでは動けねぇよ」
「…そ、そうね」
「どうした?」
「な、んでもない」

窓の外を一瞥して、興味がなさそうに答える言葉につっかえながら返事をして。
ふい、と逸らした視界の端で漆黒が揺らめいた。
首を傾げながら触れてくる指先はひんやりと冷たくて。
肌に纏わりつく雨水をゆっくりと絡め取っては撫でるように伝っていく。
至近距離に感じる吐息が熱を帯びて。
心音が全身を駆け巡るように響き渡った。

「…ルーシィ」

低く呼びかける声は艶めいて、湿気を含む。
顔中に集まる熱に、くらりと眩暈がして。
冷え切った肌が麻痺するように響く感触を広げていった。

「っ…なに、よ」

意識を逸らして耐えるように小さく答えれば、大層愉しげにグレイの口角があがって。
押し込められていた笑い声が漏れてくる。

「くっく…おま、ほんと純情なのな」
「―――っグレイ!!!」

羞恥に染まった頬は赤らんだまま、睨み上げる瞳は涙を滲ませて。
真っ直ぐに捕えてくる視線に唐突に息が詰まった。
冷気を纏った身体が熱に煽られて。
溺れるように惹かれていく思考に両目を覆う。
戯れようと伸ばした手は触れた途端に侵された。


be caught unawares


fin.
***
09.06.2011*グレルーの日。

be caught unawares:不意打ちを食らう

日記に投下してたのを書き直した。
おまけつけようか悩んだけどおまけの需要も感じなかったので止めてみた。

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