夜気が冷たく肌を覆い、熱を保っていた温度がだんだんと下がっていく。
今夜は収穫祭。
ギルドではハロウィンに託けて、魔除けの焚き火を焚いて仮装してパーティーを開いていた。
ルーシィもまたマグノリアの子供たちが訊ねてくる度に南瓜のお菓子を配っていたが、途中で見慣れた桜色が見えなくなったので探しに行くついでに帰路を辿る。

「トリック・オア・トリート」

かちゃり、と扉を開けた瞬間に飛びこんできた聞き慣れた声。
暗闇からの声にびくり、と身体が震えて。
手にしていた鍵が手元から滑り落ちた。

「かっかっか!!!びっくりしただろー!」

愉しそうに紡がれた声は探しに行こうと思っていた人物。
わざとらしい低いゆっくりとした声は宛ら驚かそうと思ったのか。
容易についた想像に盛大な溜息を吐き出す。

「ナツ!なに勝手に帰ってるのよ!!」

ぱちり、と電気を付けて顔を上げれば、いつものようにベッドの上で胡坐を掻いているナツがいた。
少しでも驚いたことが悔しくて、恥ずかしくて。
頬に上る熱を誤魔化すように顔を逸らせば、ナツは満足そうに口角をあげる。

「だって一緒に帰ってきたら意味ないだろ」
「…あのね、いきなりいなくなったら心配するでしょ」

ハッピーが、と続ければそれまで満足そうに笑っていた表情が不意に眉を顰めた。
そんな些細な変化に気付くはずもなく、お菓子がなくなって暇をしているであろう相棒を気遣った青い仔猫の言葉を伝えるルーシィ。
つまらなそうに口を尖らせてもルーシィは淡々と言葉を紡いでいて。
段々エルザに似てきたんじゃないかと溜息を飲み込めば、ふと甘い香りに混じった不快な匂い。

「せめて一言…わっ!なに…」

考えるよりも先に身体が動いて。
纏う匂いの正体を探すようにその身体へ鼻を近付ける。

「くせぇ…ぐぉっ」

端的に感想を口にした途端、息継ぐ間もなく肋を殴られた。
呻くように身体を曲げれば、ルーシィは小さく溜息を吐き出して部屋へ入っていく。
覗くように視線だけを向ければ、その頬は赤く染まっていて。
流れ込む不思議な感情に釣られるように言葉が零れ落ちた。

「ルーシィ」
「な、によ」
「…お菓子やるから悪戯させろ」



お菓子あげるから
イタズラさせてください


→ おまけ
***
ナツル…書けません症候群。
うーわーもう酷い出来過ぎて泣きたい。

Halloween:2011.10.31.


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