人の少なくなった校舎に鳴り響く鐘の音。
雑務の終わった生徒は次々と下校して。
この生徒会室には二人だけ。
資料整理していたロキが手を止めて振り返った。

「勉強?」
「うん、次の模試で大学決めようと思ってるから」

尤もらしい理由をつけて。
少しでも長くあなたと一緒にいたい。
掴みきれない笑顔。
誰にでも平等に接するその態度。
少しでも独占したくて。
だけど可愛くなんてなれない。
他の女の子たちと一緒になんてされたくない。
そんなこと思っているなんてきっとあなたには伝わらない。

「…いいよ?」

ふにゃりと笑って予想通りの了承の言葉。
ぱたん、と閉じたファイルを棚へ戻して。
かたん、と隣に座るロキ。

「でも珍しいね?ルーシィ成績いいのに」

目を細めて楽しそうに覗き込んでくる表情は何かを確信していて。

(…わかっててやってるのかしら)

その意地の悪さにひくり、と頬が引き攣った。

「だ、から…大事な模試だから」
「うん…嬉しいよ?」

にっこりと笑った表情がどこかいつもと違って見えて。
す、と頬へ添えられた手に理由を知る。

「でもタダじゃ教えてあげない」

ゆっくりと滑る手の甲を感じながら交わる肌の熱が甦った。
波打つ心臓の高鳴りに眼を見開いて。
呼吸をするのも忘れて時が止まる。
掠めるように重なった唇。
漏れた吐息。
混ざり合う熱。

「…ん」

ちゅ、と絡み合った音を残して微かに離れて。
少しだけ長い後ろ髪に指を絡ませた。
零れる吐息に混ぜて声に乗せた言葉は掠れて。
震える指をきゅ、と隠す。
こつん、と合わさる額に瞳を閉じて―――。


「ぜんぶあげる」


fin.
***
お題使用:【教師と生徒の恋模様】:触れて欲しいのに

挑戦設定:『先輩と後輩』の組合せで『R12で可愛くちゅー』を目指して頑張りましょう。


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