暖かい炎の灯は桜色の彼を思い起こさせて。
いつも側にいることを強く意識に植え付けて。
どんな時も安心させてくれた。
だけど―――。
ひんやりと触れる掌の冷たさが心地好くて。
肌に混ざり合って温かくなる瞬間、どうしようもなく安心してしまうのはきっと…―――。

「そろそろ機嫌直せって」

くしゃり、と金糸に混ぜられた骨ばった手。
優しく撫でられるその感触に身を任せて。
頬を膨らませて、首だけを思い切り逸らす。

「誰のせいだと思ってるのよ」
「俺だな」

苦笑しながら平然と答えるその姿に怒る気もなくなって。
小さく息を吐き出した。

「もう、グレイとふたりなら報酬額減ることなんてないと思ってたのに」

それでも諦めきれずに差し引かれた明細を見ながら口を尖らせて。
いつも清々しい程に破壊する桜色へ視線を向ける。

「悪かったって。だから―――」

揺れ動いた視線を戻すように髪を弄んでいた手を顎へ滑らせて。
ゆっくりと引き寄せた。

「一緒にすんのはヤメロ」

ふるり、と震える耳へ低く熱く囁いて。
徐々に熱を、朱を帯びる白い肌を満足気に眺める。

「どうした?姫様」
「な、んでも…ないわよ」

恥ずかしそうに口籠りながらたどたどしく紡ぐ声は心なしか艶やかで。
くっく、と喉で笑う様を悔しそうに睨む姿すら愛おしい。
顎に掛けた手を離して再び金糸に指を混ぜれば。
さらり、と零れた金糸と白い肌に映える朱が情欲を駆らせた。
意図して仕掛けてくる色気よりも効果抜群だ、なんて頭の片隅でぼんやりと思って。

「…さて、じゃぁ次の仕事行きますか」

溺れていく感情に歯止めを効かせる。
立ち上がって手を差し伸べて。
あどけない表情に混ざる女の顔に苦笑した。
点いたばかりの火の灯がじんわりと沁みていく…―――。


fin.
***
09月06日:誕生花`金蓮花:ノウゼンハレン・ナスタチウム`
*困難に打ち克つ・勝利・恋の火・嘲り、思慮.

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