いつも以上に騒がしいギルド。
年に一度の聖なる夜は仕事に出る者も少ない。
普段よりも賑わっている酒場でいつものカウンター席に座るとハッピーが嬉しそうな声を上げて突っ込んできた。
「ルーシィーーー!」
「ハッピー、どうかしたの?」
「あい!今日はクリスマスだよ、ルーシィ」
ぽすん、と小さな音を立てて。
嬉々として目を輝かせる様子は宛ら子供のようだと思いながら頭を撫でる。
「大通りのイルミネーションをシャルルと見に行くんだ!ルーシィは?」
「うーん…見たいけど、なんかカップルだらけだし、さ」
「ルーシィ、寂しいんだね」
「自分はデートだからって哀れまないでくれるかしら」
「じゃぁ、僕と見に行かないかい?」
可哀相、と同情の眼差しを向ける青い仔猫の頬を引っ張って。
ぎゅぅぎゅぅと伸ばせば、不意に頭上から声が降ってきた。
「ロキ!」
「ルーシィがなかなか呼んでくれないから、会いたくて来ちゃったよ」
見上げた先には爽やかな笑みを張り付けたロキ。
微笑みながらも自然に肩へと腕を回してくる様子に苦笑する。
「あら、女の子との約束がいっぱいあるんじゃないかしら?」
「嬉しいなぁ。妬いてくれてるの?」
くすり、と笑みを零して。
甘い誘い文句を囁きながらにこにこと金糸へ口付けひとつ。
肌を掠める吐息にほんのりと熱くなる頬。
動揺を隠すように口を尖らせて、回された腕をやんわりと外した。
「はいはい、違いますー。また勝手に出てきて…」
「ナツと見に行けば?ルーシィ」
溜息交じりに視線を逸らして言葉を紡げば、引っ張られた頬を押さえながらハッピーが提案する。
きょとん、と目を丸くするルーシィの隣でロキが眉を顰めた。
「ハッピー、僕の味方にはなってくれないの?」
「あい。ロキは他にも誘う相手がいるけど、ナツにはルーシィだけなのです」
「なんだか誤解を招く表現ね」
「ルーシィにはナツしかいないって言い方もあるけどね!」
「それはそれでなんだかいやだわ」
「ひどいな、僕にもルーシィしか…」
頭を押さえるルーシィ。
何故か誇らしげなハッピー。
心外だと再び口説き始めるロキ。
そんなふたりと一匹を微笑ましく眺めていたミラジェーンは、にこにこ笑いながら口を開く。
「でも、ロキ。さっき女の子たちがロキはどこにいるのって訪ねてきたわよ?」
「え…」
焦ったように振り返る彼へギルドの入り口を指せば、その先には数人の女の子が手を振って近付いて来ようとしていた。
「よかったわね。待ってるみたいよ?」
早く行ったら、と冷たい声で促す少女へ冷や汗が額に浮かぶ。
「ル、ルーシィ…僕は…」
「いいの。気にしないで、ロキ」
にっこりと微笑み、早く行けとばかりに扉を指して。
合わせていた視線はすっかりカウンターへと向けられていた。
「…わかったよ」
何度か口を開いて躊躇った後、諦めたように苦笑して。
少しだけ儚げに笑うと、ルーシィの手首を持ち上げる。
「え?」
「クリスマスプレゼント」
星が散りばめられた金のブレスレット。
慣れた手つきでそれを止めて。
困惑する瞳へにっこりと微笑むと、流れるように額へ口付けひとつ。
「今、ここにいられるのは、君のおかげだから…」
「…あの」
「これは、その感謝の気持ち」
するり、と離れた身体は真っ直ぐに女の子たちのところへと向かった。
その後ろ姿を見送って。
ルーシィの顔はみるみる赤く染まっていく。
「さすが、ロキね」
「それがロキです」
ミラジェーンとハッピーは感心したように言い合った。
Merry Christmasfin.
***
ナツルーにしようと思ってたのに長くなりそうだったから途中でやめたらロキルーになっちゃった。
最終的には、ルーシィ総受けを作り上げたかった。
ロキルー→グレルー→ナツルー→おまけヒビルーみたいな構成でやってみたかった。
またいずれ挑戦予定。
*2010.12.25.*
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