「何してんだ。お前ら」
不機嫌な声。一瞬の間。
そして、その言葉に答えたのはロキだった。
「なにって、見てわからないかな。デートしてるんだよ?」
冷静な声。少しも動じない姿。
しかし、陽気さを含んだ笑顔。
答えた相手も答えられた内容もナツにとっては、何故か不快感を煽るもので。
少し驚いたような困惑の混じったルーシィの表情がより一層不愉快だった。
黙って睨みつけてくるナツに溜息一つ。
「じゃぁ僕ら、まだデートの途中だから」
そう言ってロキは、わざとらしくルーシィの肩を抱くと先を促す。
「待てよ」
ナツから数歩離れた位置で、ロキが足を止めた。
「どうかした?ナツ」
「なんかよくわかんねぇけど、ルーシィがロキといんのは面白くねぇ」
どういうつもりだったのか、どういう意味だったのか。
それは多分、その場にいる中ではロキにしかわからなかったかもしれない。
けれど、それを教えてやるほどロキも大人にはなれなかった。
「それは、僕に対する宣戦布告かな?」
柔らかい口調。
確かににっこりと笑っているその瞳はひどく冷たかった。
「は?どういう意味だよ、それ」
「どういうって、そのままの意味だけどな」
ロキが苦笑する。
(無意識の独占欲…か)
「ロキ!えと、今日は付き合ってくれてありがとう…あの……」
そんなふたりの空気に耐え切れなくなってルーシィが口を切った。
頬を真っ赤に染めて、懸命に言葉を紡ぎ出すルーシィ。
ロキは、くすりと笑みを零すと同時にその耳元へ唇を寄せる。
「残念だな。でも、仕方ないからまた今度ね」
聴覚の優れているナツに聞こえないよう小声でそう告げるとロキは静かに星霊界へ帰っていった。
そうしてルーシィは立ち止ったままのナツを呼ぶ。
「ナツ」
「なんだよ」
「なんでそんな不機嫌なのよ」
「わかんねぇよ、俺が知りたい」
「でも、なんか腹立った」そう続けるナツの言葉を繰り返しながらルーシィは首を捻った。
(……ナツとロキって仲良くなかったっけ?)
「とりあえず、ロキとデートすんなよ」
ぶっきら棒にそう声に出して。
ナツはルーシィの手を握るとどことも言わずに歩き出す。
「…あのね、ロキはデートだって言ったけど買い物に付き合ってもらってただけよ?」
溜息混じりにそう応えるルーシィは、いつもと何も変わっていなくて。
自分ひとり、もやもやした気持ちなのかとナツは唇を尖らせた。
「じゃぁ、ロキとふたりでどっかいったりすんなよ」
「な、なんでナツにそこまで言われなきゃならないのよ」
怒ったように放つ言葉は乱暴で。
普段と異なった様子のナツにルーシィは困惑していた。
「だぁ―――!わっかんねぇよっ!!でもなんか腹立つんだ!」
ガシガシ、と乱暴に頭を掻いてナツは喚き出す。
「それって、仲の良い友達が他の子と仲良くしてると面白くないってこと?」
「知るか!いやなものはいやなんだっ!」
「まったく、子供なんだから、ナツは。」
とにかく嫌だ、と主張するナツ。
勝手にひとり納得をして呆れるルーシィ。
(ふたりともあんま大差ないと思うけどなぁ。)
終始黙ってやりとりを見守っていたハッピーは鈍感なふたりにやれやれ、と溜息をついた。
fin.
***
carpio:たにし様へ相互記念として書かせていただきました。
たにし様に頂いた素敵な宝物に対してこんなナツルーどうなの、ってちょっと半泣き気味ですが。
無意識無自覚に独占欲剥き出しなジェラシーナツ。
もしお気に召して頂ければお持ち下さい。
たにしさまのみお持ち帰り可。
相互、本当に本当にありがとうございました!
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