清々しい青を彩った空を風が緑の匂いを乗せてくる。
くん、と鼻を鳴らしていつものように窓から侵入すると見慣れた姿がなかった。
部屋を見渡しても人の気配がせず、首を傾げると奥から水の音が聞こえてくる。

 (なんだ…風呂か)

ひとり納得して陽を吸収したベッドへごろん、と横になった。
数秒も経たない内に瞼が重くなる。

「気持ちよかった、ねぇプルー?」

鼻歌交じりにぷるぷると震えている愛玩星霊を抱えながら部屋へ戻るとベッドの上に見慣れた桜色。
反射的に腕に抱えている星霊をぶん、と投げそうになって標的が寝ていることに気付いた。

「まったくもう」

また勝手に、と一人呟きながらプルーを抱え直して、近寄る。
すぅ、と心地良さそうな寝息が聞こえてきて窓の外へ視線を動かした。

「…ハッピーはどうしたのかしら?」

いつも側にいる青い猫を探すが視界には何も映らない。
小さく溜息をついて、ベッドの端へ腰を下して平和そうな寝顔を覗く。

「しばらく起きそうにないわね…誰の家だと思ってるかしら」

じろり、と睨みつけて欠伸ひとつ。
そのまま睡魔に襲われた。

「……ったく」

ずしり、と重みが増した反動で目を覚ますと入れ違いに瞼を閉じた彼女を見下ろす。
ゆっくりと半身を起して散らばる金糸に手を伸ばした。

 (誰の家ってルーシィん家だろ…ばかか?)

ルーシィの部屋だから来ているのに。
何故わからないのか。

「ん?」

頭に過った言葉を反復して首を傾げる。

 (なんでルーシィん家だから来てるんだ?)

楽しいから。
面白いから。
笑うから。

 (…ルーシィが、笑うから)

繋ぎ出た答えの意味が理解できずに微かな寝息を立てている原因を見やった。

「ん」

小さく身動ぎをして零れ落ちる吐息。
惹かれるままにその唇へ顔を寄せた。

「…っ」

掠めるように合わさった感触を自覚して勢いよく身を引く。
甘さを残す匂いと微かについた薄いリップグロス。
意識せずとも上がる体温に焦るようにがしがし、と頭を掻いた。
ベッドの上でジタバタしているにも関わらずまったく起きる気配のないルーシィ。



 (あー、くそ。俺ルーシィのこと…―――。)



fin.
***
15000打を踏んで下さったあくあさまのカウンターリクエスト『ナツルーで無意識にルーシィにキスしたナツが自分の気持ちを自覚する話』です^^*!

長らくお待たせ致しました!
当初の予定とは全然違う話になりましたが…(汗)
初めの予定では、魚釣りに行こうぜってルーシィを誘うナツから始まって…という感じでした。
うむむ。でもこれはこれで気に入ってたりします。

あくあ様のみお持ち帰り可。
15000hit本当にありがとうございました!!


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