一体いつから気にしていたのか。
気付いた時には既に視界の先にはいつも揺れる金糸が映っていた。
くしゃり、と柔らかいその髪を掌で弄びながら小さく溜息を吐く。

 (このお姫様はどうしてこう警戒心が足らないかね―――)

「グレイ?」

静かな部屋に響いたそれは妙に強調されて聞こえたのか、乗せられた手に沿ってルーシィが顔を上げた。

「どうかしたの?」
「…なんでもねぇよ」

首を傾げて見上げてくる仕草に思わず片手で顔を覆って唸る。

「変なの」

くすり、と笑みを零して、再び手元の本へと視線を戻すルーシィ。

 (あー…二人っきりっつーのも考えものだな)

手を乗せて仰いだ天井を指の隙間から睨みあげて瞼を閉じた。
次第に薄れていく思考の中で睡魔に意識を委ねようと身体の力を抜く。
途端、くい、とシャツが引っ張られた。

「…なんだよ?」

手放しかけた意識を留めて重い頭を上げれば、ふわりと霞む甘い香りが近付く。
掠るように触れた柔らかな感触。
唐突な出来事に一瞬呼吸をするのも忘れて瞬きひとつ。
す、と離れた身体を横目で追えば、一生懸命に本を読んでいる姿勢に戻った。
思わず噴き出して、ゆっくりと肩を抱き寄せればぴくり、と身体が強張る。

「…ぐ、グレイが…さっきから、つまらなそうだったから、その…」

言い訳を必死に紡ぎ出す仕草も徐々に朱に染まる頬も全てが愛らしい。
込み上げてくる擽ったい想いに知らず口角が上がった。

「ばーか」
「…な、ばかって失礼ね!」

俯いていた顔が上げられた瞬間、捉えるようにその顎に手をかける。

「キスってのはなぁ、こうすんだよ」

熱い吐息が混ざり合って。
零れ落ちる声すらも飲み込んだ。
時が止まったようにこの瞬間、温度が融け合う―――。


fin.
***
champ de fleurs:なる様へこっそり相互記念に書かせて頂きました。

へたれグレイを男前に、をコンセプトに頑張ってみたり。
いあ、グレルーをもうちょっと勉強してみようと思います。
甘い二人になっていればいいな。

mixture:混合・混和

改めまして、好き勝手に書き散らして混沌に塗れている総受けサイトですが、どうぞ今後ともに宜しくお願い致します。

相互、本当にありがとうございました!

もしお気に召して頂ければお持ち下さい。
なるさまのみお持ち帰り可。


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