「もうっ!早く帰ってってば!!」
「あのなぁ、いい加減傷つくぞ」

溜息混じりに半眼で見下ろせば。
必死に追い出そうと騒ぐルーシィ。
埒のあかない問答に何度目かもわからない溜息を吐き出して、瞼を閉じる。
元々眠れなくてやってきたのだ。
ナツの眠気は当に限界を超えていた。
喚き続けるルーシィの声を子守唄に睡魔に飲み込まれる。

「ちょっと!ナツってば!!」

聞いてるの、と続けた何度目かの問いかけに返ってきたのは心地良さそうな寝息。
すぅ、と降ってきた音に思わず脱力した。
眠ったからといって腕の力が緩むわけでもなく。
抱き枕の如く、髪に頬を摺り寄せてくるナツ。

「もう…なんなのよ」

ひとり呟いて、とうとう諦める。
温かなその身体に引き寄せられるように擦り寄って―――瞼を閉じた。
ナツが離してくれないから仕方なく、自分からじゃない、などと言い訳を考えている内に睡魔に呑み込まれていく。


―――どのくらいの時間眠っていたのか、窓からは西日が差し込んでいた。
薄らと浮上する意識に従って閉じていた瞼を静かに開いて。
二度三度とゆっくりと瞬きをする。
腕の中には、ルーシィが静かに寝息を立てて眠っていて。
少し赤い目元をなぞるように頬へ手を添えれば。

「ん」

小さく身動ぎをして、ぱちり、と瞼が開いた。

「よぉ、もう夕方だぞ」

覗き込んでそう言えば、朦朧とした意識の中で曖昧に相槌を打って。
ナツの顔を認識するなりその身体がみるみる強張っていく。

「顔赤いけど大丈夫か?」
「な、ちがっ……これは…ていうか、いい加減にもう離れてよ」

腕の中で緊張しているルーシィを不思議に思いながら問えば。
どもりながら発せられる言葉。
その声はあまり意味を成していなくて。
とにかく離れて欲しい、という意志だけが感じ取れた。

「残忍なやつだな」

そんなに嫌がることねぇだろ、と口を尖らせて。
ぼそり、と呟けば寝起きにも関わらず頬を染めて騒ぎ始める。

「な、なんでよっ!だ、だいたいあんたがあたしを勝手に抱き枕にして眠るから…」

くどくどと続けられる言葉は聞いていられず。
仕方なしにルーシィを離せば、すぐさまベッドから離れていって。
ころころと変わる表情は楽しく感じる半面、時々理解できない類のものもあって。
わからないことが少しだけ苛つく。
手の内の温もりは手放したくない。

「ちぇ、減るもんでもねぇだろ」
「減るとか減らないの問題じゃないのよ!」

解放されたルーシィはいつもと変わらず。
近くに感じる時と遠くに感じる時の差が大きい。
まるでルーシィの持っている感情そのままのように。
掴もうとして掴みきれない想いを理解していないように感じて。
もやもやと渦巻く感情を打ち消すように首を振った。

「ナツ…?」

怪訝そうに覗き込んでくるルーシィが視界の端に映って。
揺れる瞳を捕らえれば。
ふわり、と甘い匂いが鼻先を擽る。
惹き寄せられるようにその腕を掴んで。
自分の行動の意味を理解しきれずに押し黙っていれば、ルーシィが更に訝しげに目を細めた。

「ど、どうしたの?」
「わかんねぇ」
「は?」
「わかんねぇけど、身体が勝手に動いた」

ありのままに状況を言葉にして。
困惑した表情を見遣る。

「甘かったんだ」

感じたままを口にして。
考える前にその唇へ自分のそれを重ねた。
目を見開いて、固まるルーシィ。

「ナツ?」

小さく驚きを口にして、ゆっくりと触れた唇へ指を当てる。
身体中に熱が集まるのを感じながら。
本能のままにその手首を掴んで。
誘われるように深くその唇へ吸いついた。

「ん…っ……ぅ……ナ、ツ」

酸素を求めて開く合間を縫って舌を口内へ侵入させて。
奥へ奥へと唾液を絡ませる。
呼ばれる声に崩れていく思考。
痺れる感覚に身を委ねてその白い身体をベッドへ縫い付けるように押し倒した―――。


》to be continue.
***
意識しているようなしていないような。
続きは一応R指定なので御注意願います。

Back




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -