※以前、Cait Sith Wisker:歌海ねこ様が日記で呟いていた`高校生くらいのロキがバイク事故で足を骨折して幼児病棟を通りかかった時にルーシィ女医を見つけて口説く`シチュエーションを拝借して小児病棟パロディ。
苦手な方は御注意下さいませ。
***
「ついてないな…」

ひとり呟いて見上げたその建物は普段通い慣れていないせいか重々しい空気を漂わせる。
持ち慣れない松葉杖をひょい、と引き寄せて。
覚束ない足取りで立ち上がった。
見渡せば小さな子どもたちが危なっかしく走り回っている。

ひと月前――急に飛び出してきた子どもを避けた拍子にバイクが転倒。
片足を骨折して全治一カ月を余儀なくされた。
不幸中の幸いか、今は夏休み。
見舞いに来る友人には事欠かないが、やることがない事実に変わりはなく。
暇を持て余して痛む足を引き摺り、気分転換に中庭へ出て来たものの戻るべき病棟がわからなくなってしまった。

「子どもばっかりねぇ…小児棟かな」

呑気にそんなことを考えて、白衣姿を探すべく近くの入口へと一歩進める。
同時に、視界の端を小さな影が横切って、幼い声が悲鳴を上げた。

「きゃぁっ」
「―――っ…いっ!!?」

避けた拍子に衣服が擦れて、バランスが崩れる。
途端、激痛が走って思わず呻くが、視線を落とせば少女が転んだままだった。

「だ、いじょうぶ?」

息を吐くことさえ儘ならない状態だが、出来るだけ優しく声をかけて。
手を差し出そうと腕を伸ばす。

「大丈夫!?」

刹那、それより先に金糸が視界を覆った。
焦ったように少女の名を呼んで抱き締めると、序で大きな瞳が見上げてくる。

「あなたも、足…大丈夫?」

泣きそうな表情。
苦しげに歪んだ眉。
微かに震えている指先。

呼吸をすることも忘れて、言葉を失っていると金糸が揺れた。

「あの…」
「ごめんなさい、おにいちゃん」

困ったように紡ぎ出された声にはっとして。
彼女に被せて謝る少女に微笑む。

「大丈夫だよ。でも、気をつけなきゃ危ないからね?」

優しくそう答えれば、漸く安心したような笑顔が返されて。
少女は再び元気よく走り出した。
その後ろ姿を眺めて小さく息をつけば、白衣に身を包んだ彼女が心配そうに見上げてくる。

「ごめんなさい。痛かったでしょう?」
「んー…でも仕方ないからね」
「ちゃんと注意するようにします。あなたも―――」

遮るようにその腕を掴んで、確かめるようにその顔を眺めれば。
みるみる白い頬が赤く染まっていった。

「…あ、の」
「綺麗だね」
「は?」
「いや、あんまりにも綺麗だからびっくりしちゃった」
「な、にを言って…」

先程までの儚げな表情は一変し、口をぱくぱくと開く彼女。
不審者を見るような眼差しに胸の内で苦笑して。
にっこりと微笑んでから用意していた口実を紡ぎ出した。

「迷っちゃったみたいでさ、案内してくれませんか?」

大人びた表情がくるくると変わっていく。
焦ったような声、困ったような仕草。
そのどれもが愛らしくて、思わず笑みが零れた。
病室へ戻るまでの間、これからどうやって彼女を口説こうか。
こんな出会いがあるなら入院生活も悪くない。


***
これまたいつのっていうくらいお久しぶりなお話。
小児病棟ロキル-出会い編-

ふ、同じシチュでOpen Me:ぎゃらさまとGuroriosa:碧っち。さまが書かれてるけど…。
ねこねーがゆんver.もって言ってくれたので調子に乗ってみた所業。

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