触れる吐息が熱に溶ける。
冷たい指と混ざり合う度、掻き混ぜられる温度。
離れ難く吸い付くように求める声も全部。
絡み合う肌が触れ合う度に互いを強く惹き寄せ合った。

「俺だけ見てろよ」

漆黒の瞳が切なげに揺れて。
泣きそうに歪んだ唇を宥めるように塞ぐ。
優しく触れる唇も指先も。
滑るように流れる掌も。
熱に浮かされて零れ落ちた涙も全て。
何度も何度も飽きるほど呼んでは求めて。
ひんやりと触れてくる腕に身体を預けた。

「離す気なんか…」

掠れた低い声が耳元で響いて。
頷けずに俯いた視線を上げる。
零れるようにさらり、と絡んだ金糸に口付た。
啄ばむように触れては離れて。
柔らかな感触を肌に残して。
冷たさに馴染んだ体温が朱を咲かせていく。
揺れる漆黒の髪を指先で弄んで。
互いの額がこつん、と合わさった。

「最初っからねぇんだよ」

苦しげに歪んだ眉根。
震えるように零れ落ちる吐息。
乱れた呼吸を閉じ込めるように腕の中へ引き寄せる。

「ごめ…ん、ね」

つ、と流れた涙に小さく舌打ちをして。
乱暴に呑み込んだ声も息も微かに押し返す掌も。
溢れる想いごと優しく包み込んだ。
交わる視線に眩暈を覚えて。
琥珀に沈む漆黒の闇が静寂を支配する。
浮かされた熱は鎮まることを知らずに夜へ溺れていった―――。



溺れる夜は熱に沈んだ


fin.
***
微えろ?か謎のグレル。

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