「ナツ」
「ん」
「仲直り、しよ?」

腕に頭を押し付けそうなナツに漸くその一言を告げる。
きゅ、と微かに力が込められた手にゆっくりと引き寄せられて短い返事が降ってきた。
唐突な行動に息を呑んで、一連の行動に羞恥心が込み上げてくる。
熱くなる頬を隠そうとその胸に顔を隠すと先ほどと同じ真剣な声に呼ばれた。

「…ルーシィ」
「な、なに」
「あの、ご…ごめん」

包み込まれた腕から顔を上げると仄かに頬を赤らめたナツが視界に映って思わず可笑しくなる。

「…本当にね」

仕方ないなぁ、と思ってしまうのはいつになっても変わらない。
どんなに許せないと思っていても結局はこうして許してしまう。
そんな自分に苦笑して手の内に持っていた小箱をナツへと手渡した。

「仲直りのシルシ」
「なんだ?」
「あ、帰ってから開けてね!」

悪戯に微笑んでナツから離れるとくるり、と背を向けて歩き出す。

「あ…おい」

焦ったその声に半分だけ振り向いて最後に一言。

「明日、仕事行こうね」


fin.
***
-おまけ-


あの時、振り向いたルーシィの笑顔はきらきら光って見えて。
靡く金糸が光に透けてとても綺麗で―――。
思わず息を呑んだ。

「ね、ちゃんと帰ってから開けた?」

言葉通りに仕事に行った帰り道。
ひょい、とルーシィが様子を窺ってくる。
その顔は悪戯が成功したような無邪気さを放っていて。
ポケットに入れたままの未だ開けていない箱の側面をなぞった。

「…まだ」
「なんでよ?」

眉を顰めるその姿に、やや気まずそうに息を吐く。

「変な匂いがする」
「…早く開けないともっと変な匂いするかもよ?」
「なにが入ってんだよ」
「それは内緒」
「…つーか、想像つくけど」
「あはは、ごめんね?まぁ、捨てても良いよ!」

悪戯に失敗した子供のように困ったように苦笑して。
一歩、二歩、先へ進んだ。

「誰が捨てっかよ」

その後ろ姿にぼそりと呟いて。
微かに熱くなった頬を隠す様にマフラーを引きあげる。


***
《03.09-04.15*拍手お礼*おまけ》
大変長らく掛かりました。
ひとまずは、これにて完結でございます。
長い間お付き合い下さり、誠にありがとうございます。
ゆんに長編は向かないことが良くわかりました。
これに懲りて今後の拍手御礼は完結型にしようと思っております。

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