01. 温度差のあるキス【G*L】

「本当に、いいんだな?」

互いの吐息が熱く混じり合う距離で最後の確認を取る。
視界の端に映ったのは微かに揺れた金糸。
罪悪感なんて存在するはずもない。
この瞬間に想いを捨てる彼女と想いを成就させた俺の温度が融け合う。


02. 誰も居ない空間に「おやすみ」【N*L】

いつも騒がしく入ってきていた窓際を眺めて溜息ひとつ。
なにも考えずに追い出し続けていたことを微かに悔やんで静けさに消えた音をなぞる。
言葉にできない想いをたったひとつだけ。
焦がすその名を胸に誰もいないこの部屋で瞼を閉じて呟くように零す。


03. 痛みという名の思い出だらけ【J*E】

『悪』だと決めつけてきていた。
すべてを受け入れきれない己の弱さを鎧で覆い隠して。
逃げないと誓ったあの日よりも前はただ只管に逃げていただけだったのかもしれない。
再び出逢ってしまったその人へ『側にいる』と言葉にしたのに。
確かにそう想ったのに。
この無力さを嘆いては胸の内に仕舞い込む。

「エルザ、大丈夫?」
「ああ、すまない」

無意識に鎧を纏ってしまうことをどうか悟られまいと薄く笑った。


04. そんな顔もするんだね【H*L】

「泣いているの?」

初めてその感情に触れた気がして思わず声をかけてしまった。

「ヒビキ」
「どうかした?」

甘く囁けば返ってくるのは儚くも扇情的な微笑み。
そう思っていたことがそもそもの間違いだった。
だって君の芯の強さを見た僕が君の核心にそう簡単に触れられるはずもないのだから。
強がり続ける君のその心に触れられるのは一体誰?
とん、と胸に身体を委ねる君に内心驚きながらも腕はその細い肩へと延びる。
途端、ばっ、と離れた君の頬は朱に染まっていた。


05. ただ声が聞きたいだけ【C*C】

寒かった。
冷たかった。
ひとりだった。
そんな中で知った奇跡のような温もり。
命の音。
初めて愛しいと感じた。

祈りはたった一つ…―――。


06. 「愛している」の意味【L*L】

恒例と化した僕の真剣な想い。
交わされる度に胸の痛みが麻痺していく。
満たされない光ばかりを集めて。
当てなく歩いたあの日のように。

これ以上なんて在りはしないのに…―――?


07. 別れ際だけは優しい【Gazill*Levy】

何度目かの帰り道。
相変わらず沈黙ばかりが続いて。
視界に映るのはこちらを見向きもしない不機嫌そうな表情。
面倒だと思っているのか。
それならば断ればいいのに。
そう言えたらどんなに楽なのだろう。
こんな沈黙の中でもどこか片隅に過る期待。

想っているのは別の女性なのに…―――。

「オラ、着いたぜ」

じゃぁな、の言葉と共にふわり、と乗せられる大きな掌。
ひんやりと感じる間もなく優しく掠めていく数秒間。
振り返って、その背を眺めるとひらひらと合図が送られた。


08. キミが涙で滲んだ【N*L】

「好きだ」
「は?」

ルーシィが呆れたように眼を細める。
初めて知ったこの気持ちをわかってほしくて、もう一度言い放つ。

「好きだ」
「…わかったわよ」

長い溜息の後に告げられる言葉。

「ナツは、大事な仲間だもんね」

困ったように笑うルーシィ。
苛立ちよりも先に込み上げてきた感情。

「っ…違ぇよ!」

顔を上げて睨みつけたその視界は歪んでいて見えにくい。
ただ、頬を伝う熱い滴と戸惑いを含んだその吐息に唇を噛んだ。


***
お題使用:恋したくなるお題

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