「好き…だよ?」

震える声で一生懸命に告げた言葉への返事は沈黙だった。
優しいから断ることもままならなかったのか。

『仲間でいよう』

そんな答えは予想していた。
それすらもない沈黙には何も言えるわけがない。
この後の関係もすべて、終わりだと思った。
まさかこんなカタチで答えられるとは予想もしなかった。

「コレ、返事」
「……」

乱暴に押し付けられた小さな箱。
あまりにも突然に訪れた事態に声が出ない。
いくつもの疑問を言葉に換えることができずに言い淀んでは飲み込む。
辛うじて出てきたのはその行動に対する質問だった。

「な、なんで?」
「なんでって?」

不機嫌そうに訊き返す彼に負けじと強く言い返す。

「だって……返事、なかったじゃない!」

思わず滲んできた涙を隠すことなく睨みつけた。

「あー……2月の返事は3月って決まりじゃねぇの?」

言い辛そうに告げられた言葉。
その表情には困惑と躊躇いと好奇心。

「…まさか、謀ったの!?」

信じられない、と叫びそうになりながらも湧き上がる悔しさに気持ちを抑える。

「まさか」

肩を竦めながら困ったように眉を下げて「本気だ」と答えるグレイ。

「けど……待っててくれる自信はなかったけどな」

プレゼントを手に押し渡して持たせるとそのまま抱きしめた。
はぁぁ、と吐き出される長い安堵の溜息。

「…待ってた?」

掠れたそれはいつもより低く聞こえて、言葉の意味が脳に浸透して身体が熱くなる。

「ま、待ってない」

悔しくて、素直になれなくて。
嬉しいのにその一言がどうしても出てこない。

「俺、ルーシィが好きなんだけど」

さらり、と告げられた言葉に鼻先がつん、と痛んだ。
目の前の胸へ頭を預けて腰に腕を回して小さく呟く。

「…あたしも」

一ヶ月遅れの返事。
普段は優しいのにたまに意地悪。
そんなあなたがとても好き。


fin.
***
Happy White Valentine`s Day*
*2011.03.14.*

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