散らばるように金糸が揺れて、掴まれた腕は熱に包まれてじんじんと痛みを訴えている。
ぐんぐんと進む力に引かれて、もうどれくらいの距離を歩いたのか。

「ナツ、ナツ…っ」

引かれるままに小走りでナツの後を倣っていたルーシィも疲労が限界に達してきたのか、弱々しく彼の名を呼びながら力の入らない腕を揺らした。

「―――…なんだよ」

ぴたり、と立ち止まって、振り向いたナツの眼は未だ怒気を含んでいて。
原因に覚えのないルーシィはこくりと息を飲んで、溜息を吐き出す。

「何怒ってるのよ」
「……怒ってる?俺が?」

ぴくり、と動いた眉が疑問を浮かばせたように顰められて。
紡がれた言葉は訊ねたルーシィへ逆に問い返すものだった。

「どこをどう見ても喜んでいるようには見えないけど」
「何言ってんだ、ルーシィ」

自覚なく不機嫌だったのかと半ば呆れながら受け答えれば、ナツは眼を細めて嘆息する。
そうして数秒考えるように黙ると掴んでいた掌の力を緩めた。

「ナツ…?」
「……なんか、ココがもやもやして気持ち悪い」

沸騰するように全身の熱が上ったかと思えば、落ち着いた今は胸の内がぐるぐると渦巻く感情に支配されている。
ふわりと靡いた金糸を視界の端にとらえて、原因はルーシィだと理解していながらそれが何故なのかどうしてもわからなかった。

「気持ち悪いの?」
「いあ、気持ち悪ぃけど…なんか違う」

こんな感情は今まで感じたことがない。
首を傾げて心配そうに覗き込んできた琥珀色をじっと見つめて。
まるで助けを求めるように唇を噛めば、ルーシィの頬が薄く色付く。

「ルーシィ?顔、あけぇぞ」

疑問のままに触れようと伸ばした指先はふいと逸らされた頬を掠めて、形を成そうとする違和感が込み上がった。
浮かんだ想いはもやもやと咽喉に詰まって、言葉にならない。

「…っあああの、具合、悪いなら早く帰った方がいいんじゃないかしら」

焦ったようにそれだけ告げて、ルーシィは足早に帰路を辿ろうとする。
離れた空間に寂しさを覚えて咄嗟にその手首を掴めば、振り向いたルーシィの顔は真っ赤に染まっていて。
熱を帯びた白い肌がまるでこの感情の正体を知っているかのようだった。


》to be continue.
***
無自覚両片想いなふたり。
想いの名に気付くのはどっち?

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