ふわり、靡く金糸。
ざわり、騒ぐ心。
空の向こうには揺らめく朱。
雲に染まる暖かな春先の空。

「ナツ?」

どうかした、と首を傾げながら覗き込んできた琥珀色に眉を顰めた姿が映し出される。
いつもの悪戯な台詞がないことが二人きりであることを強調するような微かにぎこちない声。

「なんでもねぇよ」

薄い靄が胸の内を覆って釈然としない。
理由の掴めない現象を言葉になんて出来るはずもなく、諦めたように溜息ひとつ。

「ふぅん?」

どこか納得していない表情でそう口にしたルーシィに思わず眉がぴくり、と動いた。

(どっちにしたってルーシィのせいなんだからな)

きょとん、と大きな瞳で観察してくるようなルーシィ。
ふん、と鼻を鳴らせば、くすり、と笑みが零れた。

「なんだか不思議ね」
「あ?」
「ナツの髪、桜色でしょ?」
「?…あぁ」

見て、と指された空は夕陽が広がっている。

「桜が燃えているみたい」
「…ルーシィ、馬鹿だろ?」
「失礼ね」

怒ったような口調で笑うルーシィの瞳に映った色が鮮やかで息が止まった。
揺れる金糸に吸い込まれていく夕陽。

「たまに真面目な顔してあほなこと言うよな」

は、と楽しそうに満面の笑顔を向けてくるナツ。
あの日の笑顔と重なって思わず釣られて笑った。

「ナツは、変わらないね」

悩んでも不安を振り払って二人で笑って、そんな想い方は妙に似てきた気がする。
同じ景色をいくつ見られるのかな。
きゅ、と繋いだ手からじんわりと広がる心地良い体温。
少し屈んで覗き込んだナツの頬が空色に染ったように見えて。
くすり、と擽ったい気持ちを抑えるようにその手をしっかりと掴んだ。

「送ってくれたお礼に夕食を作ってあげる」

悪戯に微笑んでその手を引いて、夕陽の影が伸びた暗闇を飛び越える。
こんな毎日がずっと続けばいいのに…―――。


fin.
***
風花雪月:自然の美しい風景や、そこから生じる情緒情趣を意味する中国語。
日本語:花鳥風月。
中国語では、日本の【花鳥風月】と違い`美辞麗句にすぎないものごと`といった負のニュアンスを帯びる場合がある。

雪月風花:四季折々の自然の美しい景色のこと。また、それを見ながら、詩や歌を作ったりする風流なさまのこと。

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