ぽつり、落ちては消えゆく闇。
ゆるり、浮き上がっては揺れ動く光。
流れる水のように。
夢現の幻のように。
淡く浮かんでは移り変わり、決して掴むことのできない想い。
胸の内に宿る靄を打ち消すように息を止める。
重い瞼が薄らと映し出した夜の暗闇で夢だ、と気付いた。
は、と短く息を吐き出して身体を起こせば隣には幸せそうに眠る相棒の姿。

「あー、くそ」

ひとり悪態ついて、乱暴に髪を掻き乱す。
いつもと違って見えたあの日から頭の中にはルーシィばかりが浮かんできて。
言い表せない焦燥感に駆られて。
今まで誰よりも側にいて当たり前の存在が突然にいなくなってしまうような。
そんな気すらしてきて、自分らしくない思いを打ち消すように首を振っては振り払いきれない感情に溜息を吐きだした。
夜風に当たろうと外に出て、空を見上げれば彼女が好きだと言った星空で覆われていて。
余計に恋しくなってくる。
確かめるように、繋ぎとめるように、しっかりと掴んだ手も離す時は必ずやってきて。
その度に湧き上がってくる感情に支配されては戸惑いを覚えて。
考えること自体に疲れてくる。
瞼を閉じれば浮かんでくるのはきらきらと輝く金糸。
楽しそうに笑う表情。
赤らむ頬。
ころころと変わっていく感情の変化。

甘い匂い…―――。

(なんでルーシィのことばっか考えてるだけで苦しくなんだよ…)

はぁ、と深く息を吐いて、自分自身に呆れた。
いつもの道程を眺めて、ぐるぐると渦巻く感情をもう一度打ち消す。

(…顔、見に行くか)

どんな言葉でも、どんな反応でも。
ルーシィがルーシィであることだけがただひとつの真実。
強く踏み出した一歩を振り返ることなく夜の闇の中を進んで。
浮かんでは消えていく存在を捕まえに走った。

たったひとりの声が聴きたいと願って。


この腕にただ感じたいと、ただそれだけを想う…―――。


fin.
***
泡沫夢幻:人生のはかないたとえ。
水のあわと夢まぼろしの意から。
「泡沫」はあわ・あぶくの意。
「夢幻泡沫:むげんほうまつ」ともいう。

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