ざわざわと耳に入る喧騒。
相も変わらず騒がしいギルドでは、いつものメンバーがいつものようにじゃれ合って。
視界に映る桜色と漆黒がゆらゆらと飛び交っては風圧が流れ込んでくる。
そんな様子をのんびり眺めていると綺麗な緋色が遠くで靡いて横切った。
それは、もう随分長い間見続けている光景。
それなのに、心の奥底がひんやりと冷たくなっていく。
自分の知らない世界がそこにあるような気がして。
どうにもできない淋しさが込み上げて、溜息ひとつ。
渦巻いた不安を振り払うように頭を振って、ギルドを後にした―――。

堤防をふらふらと踊るように進んで。
この路の先は、まだ目新しい街であることに気付く。
この街に来た時からずっと、独りでいることが少なかったことを実感して。
ふとした瞬間に訪れる些細な不安は、きっと慣れてしまった温かさの所為。
触れられない隔たりの向こうの絆には入ることは出来ないのだと思うと込み上がる想いにつん、と鼻先に痛みが走って、誤魔化すようにルーシィは唇を噛んだ。
泣きそう、と悟った途端に溢れ出た涙。
拭う為に上げた手が不意に途中で絡め取られる。

「…ルーシィ?」
「…っぐれ…い」

咄嗟に伏せて隠した顔は多分しっかり見られていて。
詰まった言葉を必死に紡ぎ出しても平静を装った声になんてならなかった。
それなのに、ゆるゆるとあげた頭はくしゃり、と乱暴に撫でられて。
勢いのまま乗せられた掌に視線が下がる。
微かに零れ落ちた涙。
気付いているのに、決して触れてこない不器用な優しさ。
張り裂けそうな胸の内を一層、伝えられたなら素直にもなれるのに。
揺れた肩に任せて紡がれた声が震えた。
知らない世界に寂しさを感じるなんて間違ってる。
そんなことは理解しているつもりで、受け入れきれていない。
けれど、何故そう想うのかなんて考えられなくて。
とにかく溢れ出て渦巻いていくこんな不安を感じてはいられない。
惹かれるままに迎えられた腕の中。
少しだけ冷たいシャツの裾を掴めば、包むように腕の力が強まった。

「…ばーか」

考え過ぎだ、と歪んだ口許と無理矢理描かれた笑み。
遠くで水面が風に揺れて。
ひんやりとした掌の温度が混沌と渦巻く気持ちをそっと鎮める…―――。



あなただから
涙が零れ落ちた


》to be continue.
***
ナツルグレにしようと思っているなにか。

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