月明かりで目が覚めた。
ああ、野宿になったんだっけ、と思い出して。
周りで寝入っているチームの仲間達に、小さく笑みが零れる。
仕事してる間は、あれだけ騒がしかったのだけれど。
今は、世界が違うみたいに音がない。

(目……冴えちゃったな、)

みんなを起こさないように、そっとその場を抜け出した。
近くに見つけてた泉へと、足を向ける。

そうして畔で見上げた星空に、瞳を細めていれば。
後ろから温度の低い手のひらが、視界を隠すように覆ってきた。

その手をつかんで振り返ろうとするより先に、ゆるく肩を押されて身体ごと向きを変えられる。

「……びっくりするじゃない」
「眠れねーのか?」

「ん……、ていうか、起こした? 気をつけたつもりだったんだけど」
「違ェよ。オレも目が覚めただけだ」

くしゃりと髪を撫でられる。
くすぐったくて目を瞑れば、触れてた指が髪の一房を滑らせて。

耳を掠めて、首まで下りて。
確かめるような動きで、肩から腕へとなぞられる。

「――――……」

ひやりと感じる指に、息を呑んで。
身体の奥で燻る熱に、息を吐いた。

「触っていいか?」
「……も、……さ、わってる、」

いまさら取られた許可に、苦笑して。
腕から手まで下りてきた指を、自分の指先に軽く引っ掛けた。
それきり何も言わずに、お互いの指で弄ぶ。
ゆるく絡めて、先が触れるだけに離して、また重ねて。
飽きるまでずっと、繰り返して。

冷たいのか熱いのか、混ざり合ってもうよくわからない。

不意に、絡めてた指が完全に離れて。
代わりに手首をつかまれる。
声を出す余裕もないまま、口付けられた。

冷ませないでいた熱を引き出されながら、両腕で彼に絡み付いて。
両腕で、彼に抱き締められる。


月しか見てない、音のない世界で。

――お互いの息遣いだけが、ずっと消えなかった。


***
コンペイトウ*プラクティス:ナギハラ ミズキ様より`5*5R企画`にてリクエストさせて頂いてがっちり頂戴致しました。

キーワードリクエスト、ということで`静寂/吐息/熱情/伝う指先`を送らせて頂きました。

「触っていいか?」の行と`月しか見てない、音のない世界で。`の行が個人的に好き過ぎてきゅんきゅします。
静かな夜半にふたりきり。
こんな素敵なグレルをありがとうございましたーーーっ!!!
大好きです…!

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