etc | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
進撃 (4/8)
世界は絶望に満ちている

「姉さん」

声がするほうに頭を持ち上げるとそこにはよく見知った人がいる。その表情は強張り、今が異常なのだと改めて告げるようで名前は眉間に皺を寄せた。

「ミカサ、よかった無事だったのね」
「うん、アルミンも無事。姉さんも無事でよかった」
「エレンは?いつもはエレンの名前が最初なのに…どうしたの」

壁が5年前の超大型巨人の出現によってまた破壊され、医師としてはまだ未熟だが未熟なりに怪我人の治療にあたっていたときに憲兵団に拘束され、今の状態にいたる名前。
意味もわからず、理由も教えられないまま部屋に閉じ込められ、唯一の救いはパンが一切れもらえているくらいだろう。
そんな折に従姉妹にあたるミカサが来たのだ。

「エレンは…」
「エレン・イェーガーは無事だ。初めまして名前・名字。私は調査兵団団長エルヴィン・スミス。突然で悪いが一緒に来てもらおう」
「調査兵団…の、団長さんが、私になんの用事なんですか?だいだい、どうして私がこんな、それに私は」
「姉さん、お願い。もしかしたらエレンを助けられるのは姉さんかもしれないの」

暫く見ないうちにミカサの手には豆が出来ている。名前の手首に縋るように握るミカサの手。あのエレンが大好きだったミカサは変わらないが、あのミカサではないのだと時間の流れがそんなところでわかってしまった。
5年前のエレンの、ミカサも、アルミンさえも居ない。今のあの三人組は名前の知らない三人組に成長しているのだ。
名前は祈るようにしているミカサに押されるように黙り、エルヴィンの指示に従う事にした。エルヴィンの後ろには部下なのだろう、調査兵団のエンブレムをつけた兵が名前が逃げないようになのか、名前の後ろについてくる。

「あ、あのスミス団長。エレンが、なにか…」
「大丈夫、彼は無事だ。我々が保護している」
「ミカサ…」
「申し訳ないが彼女はあそこまでだ。今彼に彼女を会わせることはできなくてね」
「保護って…どういう、ことなんですか」

名前の疑問はそこを尽きる事はない。わからないことだらけなのだ。
何故自分は監禁されたのか。何故何の情報も得られないのか。エレンがどうしたのか。
そこに何か答えが開示されればまた他の疑問が浮かんで、その整理をする暇もない。
団長に掴みかかって聞けば何か得られるかもしれない。いや、そんな事をしたところで何もならない。力では絶対に勝ち得ない、それにそれだけの話術もなければ地位もない。



「な…姉さん、どうして」
「エレン…!」

調査兵団に囲まれて座っているエレンに名前は駆け寄りたい気持ちを殺されてしまった。いや、近寄る事ができなかった。その部屋の空気は張り詰め、少しでも変な行動をしてしまえば名前自身だけではなくエレンが危ないと直感したからだ。いや、名前よりもエレンが一番危ない。名前なんて言ってしまえばだたの市民でしかなく、兵士にしたら脅威に値しない。

「では名前・名字。君にいくつか聞きたい事がある」
「……」
「君とエレン・イェーガーとの関係は」
「私と、エレンの…?」
「姉さんは、ミカサの従姉妹で…」
「エレン、君ではなく名前に聞いているのだ」
「実の両親と育ての両親がなくなって、それからお世話になっていた家の息子が、エレンです」
「では、君の職業は」
「一応、医者の、ような」
「グリジャ・イェーガーとはどういった関係だ」
「エレンの父親で、私の、私が医者になりたいと思った切っ掛けの人です」
「そのグリジャ・イェーガーと最近会ったのは何時だ」
「最近は…会っていません。5年前の、あれから2、3回会ったくらいです」

まるでエレンとの関係ではなく、グリジャとの関係についての尋問だ。
エレンに視線を向ければエレンはただ黙って名前を見詰め返すことしか出来ないのだといった顔。
それに名前にはここに呼ばれ、尋問される理由が見当たらない。
名前が何か失敗をおかしたのか。いや、順調に、がむしゃらに怪我人の手当をしていた。あの現場での失敗があるなら憲兵団に拘束された事だ。そうでなければもっと誰かを助ける事ができたかもしれない。

「では違う質問だ。君はこの壁が破壊された事に関して何か聞いているか」
「超、大型巨人が壊したと…」
「では、エレンとの関係性は」
「まさか、エレンが巨人だとか言われるんですか?」

ふざけるのもいい加減にして!と名前が声を荒げようとした瞬間だ。
エレン以外の調査兵団がブレードを抜いて名前にその剣先を向けて殺気だっている。
いったいなんなのか。それを今の名前が知るよしもなく睨みつけられ、ただ名前は何事かを身構える事しかできない。

「待ってください!!姉さんは、名前姉さんは本当に何も知らないんです!!そんな、誘導尋問です!!」
「ならなんでお前が巨人という結論にたどり着くんだ!」
「姉さんは、本当に何も…知らないんです、知らないんです…俺だって、俺だって知らなかったんだ…姉さん、姉さん……」
「な、なんなの?なによ、なんなのよ…知らないって、何よ。エレン!!おじさんがどうしたって言うのよ!知らないって何!?患者の救護していた私を拘束して閉じ込めて、教えていないくせに!!部屋に押し込めて何も聞かせなかったのは貴方たちでしょう!?」

誰もがヒステリックだった。誰もがわからない。理解できない。理解しようとしていないのではなく、理解のしようがないのだ。
誰かが悪いのではない、誰も悪くはないが良くもないのだ。

「…エレン・イェーガーは此度の防衛において巨人化する能力があることが発覚した」
「……は?」
「その件に関して君はどう思う、名前・名字」
「人が、巨人になんて成れるわけ、ないじゃない…馬鹿なこと、言わないで…」
「嘘じゃない…嘘じゃ、ないんだよ姉さん…俺だって訳がわからないんだよ!!」

これじゃあ興奮して話なんて出来ないね。と誰かの一言で名前は無理矢理その部屋から出され、元の部屋に投げ込まれた。
それからどの位経ったかわからないが、また団長が来て詳しい話しを聞くことになった

<<prev  next>>
[back]