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進撃 (3/8)
留まる巨人2

「班長!名前班長!!」

振り返ると知らない兵士が1人。この調査兵団に所属してもう5年になる名前に知らない兵士は居ない。いるなら今期入った新兵だ。

「私に何か用事?」
「はい、この度新しく版に配属されましたジャン・キルシュタインです!よろしくお願いします!」
「おお!新兵なんだ。私の班にもようやく新兵がきたか!」

やったあ!!と言わんばかりに喜ぶ名前にジャンは少し困惑した。
見た目若い、しかも女が班長だなんてどんな班だよと正直思っている。しかし班員に聞いた話ではエレンが属しているリヴァイ班に特例で召集された実力者で、そこに所属移動になった時は班員全員が絶望したとか。しかしこの調査兵団で5年もいるということはそれなりの実力があるというとことだが、どうにもそれ自体が信じられない。

「皆には挨拶した?」
「はい、そうしたら皆さんに班長に挨拶しろと」
「そっか。皆元気?もう少ししたら私もリヴァイ班の仕事終わる予定だから戻れるんだけどね」
「あの、エレン…」
「ああ、エレンの友達?」
「いや、友達ってわけじゃ…」

何処となく居心地が悪そうに目を逸らしたジャン。それに関して名前はその意味を理解できないが、まあ触れて欲しくないんだろうというのは理解した。
名前が思うにジャンとエレンは悪友、もしくは腐れ縁と言う奴ではないだろうか。同じ辛い訓練をして、同じ屋根の下で生活し、同じ窯の飯を食う。ここでは誰もが通った道だ。そしてこの調査兵団では壁外調査に出れば誰かが必ず居なくなる。
もしかしたらそういう思いをしたくないのかもれしない。

「そうだ、ちょっと会っていく?」
「え」
「理由をつければいいの。そうだね…私に用事があって、その用事はエレンが居る部屋の近くにある。んで、私がエレンに用事があるから、とか」
「無理矢理じゃ…」
「いいの。私がエレンに会わせてあげたいの。だってあんな班私だったら息が詰まって嫌だもの」

若い女班長は軽く溜息をついて「ジャン、よろしく。では最初のお仕事はエレンの様子見で」と付いておいでと足をそのエレンが居る部屋に向かう。


軽やかなノック音が響いて、その後に部屋の中から入室の許可が出る。その声は男の声で、ジャンは緊張で顎を引いた。

「失礼します。エレン、いい人を連れてきたよ」
「名前さん…いい人って?」
「おい名前、何勝手に連れて来てやがる。お前わかってんのか」
「私の仕事関係の用事で来た新兵です。私が元々の班に居たら出来なかった用事ですから、仕方ないかと」
「お前…」
「じゃじゃーん!私の班に新しく入ったジャン・キルシュタイン君です!!あ、最初のじゃじゃーんは別に狙ったわけじゃないからね」

今そんな事誰も気にしてなんかいねえよ。と名前以外の誰もが思ったに違いない。
エレンはまさか自分を死に急ぎ野郎と言っていた本人が来るとは思っていなかった。
リヴァイは名前が勝手に誰かを連れてきたという事実が気に入らない。
ジャンはまさか人類最強を言われる男がここに居るなんて思ってもみなかった。

「なんで、わざわざ…」
「お前の為にきたんじゃねえよ。仕事だ、仕事」
「そうそうエレン。そんな邪険にしない。私も自分の班に戻るから、その関係で来てくれたの」
「え、名前さん班はなれるんですか…?」
「うん。元は私も班長だから」

やっと今回新兵がきたんだよ!と実に嬉しそうだ。

「私の班ね、私より皆年上なんだけど私の方がここ入ってから長くて、だから私が班長でね。ずーっと後輩欲しかったの!で、ジャン何歳?」
「15、です」
「やった!やっぱり後輩!後輩ですよ兵長!私にやっと年下の部下が出来ました!」

呆れた顔で大きな溜息をついたリヴァイは「用事が終わったならさっさと戻れ、他の奴らに見られたらやっと出来た後輩がどこかに飛ばされるぞ」と言ってやると名前はさっと顔色を変えて敬礼し、素早くジャンを連れて部屋を出る。

ジャンよりも少し小さい名前。ミカサと同じくらいの背だろうかとボンヤリとその頭を見ながら後ろを歩く。よくみてみればミカサと同じような髪色だし、どことなく顔つきも似ている気がする。

「どうかした?」
「あ、いえ…」
「熱視線を感じたから何かあったのかなって」
「………」
「じゃあこれよろしくね。手ぶらで出たら怪しいから。この書類はハンジ分隊長に。直接じゃなくてもいいから、そうだね…モブリットさんでもいいよ。もしかしらモブリットさんのほうが捕まえやすいかもだし。で、これは衛生兵に。それと…」

いつの間にか持っていた書類がほいほいと名前からジャンの腕に収められていく。そうだ、確か名前の部屋に行ってから持っていた書類が気になっていたを思い出した。
しかし「次はこれ、それでこっちはあそこ、次のこれが…」と止まらない名前の書類の波。

「あ、ごめん。覚えきれないか。よし、私も行こう」
「え」
「皆にも会いたいし」

班長に会いたい。そう言っていた班員が喜びそうだな。とジャンは思いながら書類を眺めた。

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