夏目友人帳 (4/6)
褒美を、ひとつ。
「夏目、疲れた様子だがどうした」
「ああ、名前。名前を返したんだ、妖に」
くたりと布団に寝そべる夏目に名前は声をかけた。
名前は常に夏目の側に居るわけではない。
ふと姿を消して、気が付くと居る。
たまに居ると思って話かけると姿がない事も。
先生に「よく麒麟が姿を見せていないのにわかるな」と言われたことがある。
名前は自分の意思で人に姿を見せたり見せなかったりできるそうだ。
ただ妖には常に見えるそうだ。
何故かと聞いたら「私は人に見えるべきではないからな」と笑っていた。
「斑は」
「さあ?また外にでも行ってるんじゃないか」
「用心棒が聞いて呆れるな」
「まあ、名前がいるから良いんじゃないか?」
「私は手伝ってやるとは言ったが、守るとは言っていないぞ夏目」
お前がもし妖に喰われても私は助けんぞ。と名前は恐ろしい事を口にした。
「まあ、いい。夏目、こっちへおいで」
「ここじゃ駄目か?ダルいんだ」
「だからおいで。頑張ったお前にご褒美をやろう」
四肢を折った名前に近付くと「そこにお座り」とすぐ側に腰を下ろさせた。
「目を瞑れ」
「何するんだ?」
「いいから」
名前に言われるままに目を瞑ると額にコツンと何か当たった。
硬いが、柔らかい。
とても不思議な何か。
当たったそこが微かに暖かい。
「どうだ」
「…なにが?」
「体だ。楽になったろう?」
目を開け、肩をぐるりと回してみる。
確かにあのダルさは消えている。
それになんだか体の調子がいつも以上に良く感じる。
「名前…が、やったのか?」
「健気な夏目に褒美だ」
名前が喉の奥でクツクツと笑った。
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