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冷徹 (3/4)
雛と神獣と英雄

「名前さんはどうして白澤様のところに?」

小さな体で乳棒を一生懸命扱っている最中に桃太郎が聞いてきた。
すると名前は少しきょとんのして「ああ、」と何か気づいたように笑う。
桃太郎以外には知られているが、桃太郎がここに来たのは最近。名前がここを出てから戻るまでの間に来たのだから知らなくて当然なのだ。

「先日お話しましたように、私は半神でして」
「うん。で?」
「半分人ということは、神様ではかからない病気にかかってしまうんです。白澤さまのような不純な理由ではありませんからね」
「…例えば、風邪みたいな?」
「そうです。あそこには病にかからないので薬もないので…」

以前高熱を出した時はどうなることかと…。と乾いた笑いで答える名前。
人間であった桃太郎にはその苦しみがわかるが、半分神である名前にもまさかそんな苦しみがあったとは意外である。
ということは、桃太郎とは違った目的ではあるが薬剤の資格と困らない程度に知識がほしいということになる。

「そーそー。あの時は僕が呼び出されてさ、あいつの凄い顔。まったくさ、心配性にもほどがあるよね」
「あいつ?」
「名前ちゃんの親にあたるのかな、そいつ」
「そりゃ親なら心配して当然ですよ」
「そんなもん?」
「そんなもんです」

ちょうど出ていた白澤が戻り、その会話に加わる。
白澤と名前は桃太郎より少しだけ古いだけの知り合いに過ぎず、まあ名前に甘いのは女好きの由縁だろう。神獣仲間といえど、そのくくりは半獣の名前からしたら遠い。

「ま、名前ちゃんはあいつにとってうっかり出来た子供みたいなもんだしね」
「え…」
「そのようですね」
「ちょ、ちょっと白澤様っ!そんなデリケートな…」

桃太郎の心配などどこ吹く風といったような二人。しかし桃太郎は焦っている。そんな出来ちゃった婚の離婚話のようだ。そもそも先ほどの白澤の話しぶりからしてもしかしたら名前は望まれない存在かのように。

「心配ないですよ、桃太郎さん。うっかりハッスルして私が生まれて、雛だった私を白澤さまがからかい半分に持ち上げ、うっかり下界に落っことし、たまたま中国に旅行に来ていた現世の母親の腹に宿っていた胎児と一緒になって生まれてきたのが私なので」
「ふ、複雑すぎるわ!!」
「そうですか?」
「だから名前ちゃんには今の子供の姿は神獣としての雛の人型、人間の姿の成人、本来の姿である獣型があるんだよ」
「複雑…面倒ですね。そして何より白澤さま、あんた酷いな」

あの時は大変だったよ。とまるで他人事の様な白澤に名前は「みたいですね、うかがってます」と当人は昔話を聞くように笑っている。
桃太郎にはそのことがよくわからないが、これが神獣の常識の範囲内の出来事なのだろうかと思ってしまう。
名前はちゃっかり話しながら仕事を進め、薬を完成させてしまった。名前の薬は基本的には外に出ることはなく、自分自身のために作っている。たまに忙しく、桃太郎だけでは手が足らない時に限って手伝うくらいだ。ここでの名前の仕事は基本的に雑用だ。

「ってことは、出身は日本で人間として生まれたってこと?」
「はい、そうです」
「ここに来たのって、もしかして神隠しってことに…?」
「いいえ、私は死んだんですよ」
「そ。名前ちゃんは死んで、地獄に行ってアイツが見つけて僕のところに来たってわけ」
「鬼灯さまが見つけてくださらなければ地獄で責苦のフルコースです。間一髪ですね」
「…え、死…?」
「……桃太郎さんは私の死因が知りたいんですか?」

怖いことをさらっという子供だ…。と思った桃太郎だが、見た目は子供だが中身は成人ということを思い出し、複雑な気持ちになった。
兎達よりも意志疎通ができるし、話す言葉も大人な名前。時々辛辣な言葉もでるのを考えるとやはり大人なのかもしれない。

「死んだのは、おいくつの時に」
「女性に年齢を聞くのはマナー違反ですよ」
「す、すみません…」
「今度白澤さまのいない時にでもお話します」
「えー、なんで?」
「白澤さまの前では駄目だと言いつけられていますので。強要されたら逐一報告しなさいと携帯を持たせられたくらいですから」

とりあえず、名前の言い方からすると名前の年齢は大体白澤の好みとする年齢なのだと検討を付けたが、白澤の範疇が広すぎるということに気付くまでまだ時間がかかる桃太郎であった。

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