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冷徹 (2/4)
雛と鬼神

「おや、名前さんではありませんか。お久しぶりですね」
「お久しぶりです鬼灯さま。またこちらでお世話になることになりました、よろしくお願いいたします」

訪ねてきた鬼灯に名前は行儀よく頭を深々と下げる。それにならって鬼灯も頭を下げて応える。
桃太郎はその様子を見て名前はあの鬼灯とも面識があって、しかも関係は悪くないのかと思いながら見ている。その後ろでは面白くなさそうにしているであろう白澤の気配を感じながら。

「駄獣の世話を?」
「僕が名前ちゃんの世話をしてるんだよ!漢方の!」
「そうですか、介護の」
「話を聞けよ!」
「どうして幼女の姿で?駄獣の趣味…ではなさそうですが」
「僕だってあっちの方が好きだよ!」
「ああ、駄獣対策で」

話が通じていないようで通じているように思える。あながち間違っていないといえるのだろう。
そんなことには名前も慣れているのか、特に気にするでもなくニコニコとしている。桃太郎はやっと慣れたというのに、もしかしたら成人していると言っていたのは本当なのかもしれない。

「鬼灯さんも名前とお知り合いなんですね」
「桃太郎さん、名前さんは神獣ですよ。呼び捨てはなさらない方がよろしいかと」
「えっ」
「いいんです、呼び捨てで構わないと私からお願いしたので」
「神、獣…?」
「知らなかったんですか?名前さんは神獣ですよ」

小さな体をあたふたと動かして「気にしないでください!」と必死に桃太郎に訴える名前。
その姿は実に愛らしい。幼子の動きはただそれだけが可愛いのだ。

「鬼灯さま!どうしてそんなことおっしゃるのですか」
「本当のことでしょう」
「そうですけど…神獣といっても、私なんてそんな、」
「そこの駄獣よりも十分神獣ですよ」
「神獣…ということは、姿も自由自在?あっちって、獣の姿って、こと、ですか?」
「そっちもあるけど、大人の姿もあるよ。名前ちゃん、そっちになってよ」

ロリコン!と名前と叫ぶこともなく名前は実に冷静に「嫌です。言いつけられています。叱られてしまいます」というだけだ。

「では、神獣の姿で手を打ちましょうか」
「どうして鬼灯さまが提案なさるのですか」
「だって名前さんの神獣の姿可愛いですから」
「名前ちゃんはそのままでも、大人でも可愛いんだよ」
「で、神獣の姿になっていただけるんですか」
「なりません」

近くにいた兎を持ち上げると鬼灯に渡して「この兎で許してください」と一言、そしてそそくさと桃太郎の後ろに隠れる名前。
この状況で隠れるとなれば桃太郎が妥当かもしれないが、桃太郎にしてみれば厄介ごとに巻き込まれるだけでしかないのでご免こうむりたいだろう。

「どうして桃タローくんの後ろなのさー。ここは僕でしょ」
「ロリコン偶蹄目」
「そんなこと言ってたら皆ロリコンになるだろ」
「自覚済みでしたか」

桃太郎がそんな二人の様子を若干引きながら見て、それから後ろに隠れる名前を見てみると、耳を押さえてその話題が終わるのを待っているかのようにじっとしている。
聞こえません、聞こえていませんアピールなのだろう。桃太郎と目が合うと困ったように笑って見せた。
桃太郎はちょいちょいと名前の肩をつつく。

「…神獣って、本当?」
「ま、まあ…でも、一応という、くらいで…白澤さまの様な立派なものではありません…」
「いうなれば名前さんは半神といったところです」
「そうそう、ちょっと色々あってね。中国の神だけど名前ちゃんの出身は日本だし」
「…は?」
「い、いろいろあったんですよ、桃太郎さん」

なんとなく察した桃太郎は頷き、ついでに名前を呼び捨てにするのは止めることにした。

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