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冷徹 (1/4)
雛とは

「…あの、白澤さま、いらっしゃいますか?」

小さな子供が出入り口から頭をかしげて桃太郎に問う。
恰好は白澤の着物によく似ているが、女の子ということもあってか少し華やかだ。

「ああ、今白澤様は外出しているけど…もうすぐ戻ると思うよ」
「お店で待っていてもいいですか?」
「どうぞ。白澤様にお使い?」
「…えっと、お使いでは、ない、です」

お邪魔します。と店内に入ってきた子供に桃太郎は椅子を出し、その次に来客用の茶を出す。子供用にジュースか何かあればいいのかもしれないが、普段子供は来ない。
見るとどことなく白澤に似ているような、そうでもないような。
まさか白澤の縁者か?などと桃太郎は一人でいろいろと妄想をしながら自分の仕事をしながらその子供を伺う。
当の子供はといえば、行儀良く出されたお茶を飲んで大人しく座っている。

「ただいまー」
「おかえりなさい白澤様、お客様ですよ」
「白澤さま、お久しぶりです」
「あー!名前ちゃんじゃない!!久しぶり、元気だった?ちょっと大きくなったんじゃない?」

椅子に座っていた子供がひょいと椅子から降りて、軽く白澤に向かって一礼する。
するとその姿を見た白澤はまるで久しぶりに祖父が孫に会ったようなリアクションで子供を抱き上げる。

「こっちの姿も可愛くて好きだけど、あっちの方が僕好みなんだけどなー」
「私もあっちの方が何かと楽なので好きなのですが…子供は子供らしくという方針らしく」
「折角来たんだから、ね」
「白澤さまのところに行くからこそ、と言われました」

正直桃太郎にとってはなんのこっちゃという感じだ。あっちだのこっちだの。
白澤の知り合いというのはわかる。しかし女好きの白澤がこのような幼女までも手をだすとは思いたくはない。

「今日はどうしたの?」
「手紙を出していたのですが…届いていませんか?またお世話になりたいと…」
「え?」
「……届いて、いませんでしたか…?」

不安に駆られたらしい幼女はものすごく動揺している。そしてその同様に白澤も動揺がすさまじい。
白澤には同情することはあまりない桃太郎だが、幼女のその姿はあまりにも痛々しい。
その幼女のためでも白澤のためでもないが、何か手紙らしきものが届いただろうかと桃太郎は記憶を探る。そういえば、といつだったか知り合いから来た手紙をポイと投げていた白澤の姿を思い出し、一応のためと保管しておいたそれを取り出して白澤に桃太郎は渡す。

「もしかして、これですか白澤様」
「それです!白澤さま、ご覧になられてないのですか…?」
「ご、ごめん…いや、あとで見ようと思ってて…えーっと、どれどれ」

謝々、と桃太郎から手紙を受け取って読み始める白澤。心配そうにしている幼女。
桃太郎にはどういう関係かは知らないが、幼女が気の毒で仕方がない。この子の保護者がどういう経緯で白澤に任せるといっているのかも知らないが、もし自分ならば絶対に任せたくはない。特に娘ならば。

「はーい、わかったよ。また家でお世話するよ名前ちゃん」
「…でも、その子の親御さん、よく白澤様からの返事なしで寄越しましたね…」
「この手紙の最後に『返信なしは可と受け取る』って書いてあるからだろうね」
「電話でしたらこのような行き違いもないでしょうに…」
「僕あいつの連絡先知らないんだよね」
「携帯を持たせていただいたので、お教えいたしましょうか?」
「え、いいよ…って、あいつ過保護にも携帯持たせてるんだ…」
「白澤さまのところに行くなら必要だろうと言われました」

妥当ですね。と桃太郎が笑うと幼女も少しつられて笑う。
白澤は少し嫌そうにして子供を下してひとつため息をついた。

「でもねー、前使っていた部屋は桃タローくんが使ってるんだよね」
「私床でもどこでも大丈夫ですよ」
「それはダメでしょ!女の子なんだから」
「じゃあ、僕の部屋で一緒に寝ようか」
「ロリコン。ロリコン」
「うるさいな桃タローくん。名前ちゃんは立派な女性だよ!!」
「もっと危ないわ!!こんな幼女に何考えてんだよ!」
「あ、そっか。桃タローくんは名前ちゃんと初対面だから知らないんだっけ。名前ちゃんは一応成人してるよ」
「…は?」
「このような姿ではありますが、一応は成人してます…あの、白澤さま、この場合私は成人という表現でよろしいのでしょうか…」

間違ってないからいいと思うよ。と答える白澤。
よくわからないが、とりあえず中国ってよくわからない。と思った桃太郎であった。

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