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pkmn (2/2)
ちいさなともだち2

「こんにちは、フルールです」

お馴染みになった台詞でミレアの中央にあるジムのエントランスに入る名前。その足元には尻尾をピンと立てたイーブイが愛らしい声で挨拶するように鳴いた。
その名前とイーブイの声を聞いて女の子が一人パタパタと軽い足音を立ててやってくる。
このジムリーダーの妹、ユリーカだ。

「こんにちは名前さん!イーブイ!」
「こんにちはユリーカちゃん。御注文のポフレをお届けに参りました」
「ありがとう!今お兄ちゃん呼んでくるね」
「ユリーカちゃんのサインでも大丈夫だけど…行っちゃった」

伝票というアナログなものだが、これは名前にとって実に使い勝手いい。店長も伝票が気に入っているのか、デジタルの物に変える気はないようだ。ただ最後の計算には少々勝手が悪く、店長とともに唸ることがたまにある。
このジムと店は古く…と言っても名前が入る前からの付き合いで、幼い兄弟をよく知っている店長が面倒を見ているような感じに近い。勿論ジムのことではなく、その他に関してである。ジムやポケモンバトルに関してはミレアでは指折りの存在なのは間違いないのだ。何故ならユリーカの兄のシトロンはこのミレアジムのジムリーダーなのだから。

「名前さーん、お兄ちゃん呼んできたよー」
「ありがとうユリーカちゃん。こんにちはシトロンくん。じゃあここにいつものようにサインお願いね」
「こんにちは名前さん…イーブイ…」
「ねえユリーカちゃん。サインはユリーカちゃんのでも大丈夫だよ?」

よほどユリーカに急がされたのか、ゼエゼエと肩で息をしているシトロンが名前は可哀相になってしまい、言おう言おうと思っていた事をやっと口にする。
本当ならば大人にサインをもらえば一番いいだが、ここは特別でこの兄妹のどちらかであれば良いということになっているのだ。
それにここはジムだ。兄がジムリーダーでジム戦をしていたならそれが終わるまでサインがもらえないというのも困る。

「えー?だってここのリーダーお兄ちゃんだもん」
「でもジム戦してたらサインだってできないし」
「き、気にしないでください…」
「……大丈夫?」
「はい…」

運動不足、ではないようだが見た目がフラフラしていて危なっかしい。
足元のイーブイがそのおぼつかない足に戸惑って名前の後ろに隠れて様子を伺っている。

「具合、悪いの?」
「い、いえ…急にユリーカが引っ張るから…」
「お兄ちゃん転んだんだよ!」
「え、大丈夫なの?怪我は」
「平気です…つまづいただけなので」

フラフラするのはそのせいなのだろうか。心配だが平気平気と言う手前、どうも心配を助長してくれる。
その様子をみたイーブイも心配しているのかシトロンの周りをぐるりと回って自分の存在をアピールして一声。

「大丈夫だよ、イーブイ。本当に。今度から床に物は置かないようにするよ」
「それは危ないね…でも気をつけてね、店長も心配してたんだから。それにユリーカちゃんも、お兄ちゃん引っ張ったら駄目でしょ。危ないよ」
「…はーい。ごめんね、お兄ちゃん」
「大丈夫だよ、ユリーカ」

よろしい。といわんばかりにイーブイが一声。
またそのタイミングがよくて三人一緒に吹き出して笑うと足元のイーブイが不思議そうに頭を傾げるではないか。

「イーブイ可愛い!!ねね、名前さんイーブイ抱っこして良い?」
「いいかな、イーブイ」

きょとんとしているイーブイは名前のオーケーが出る前にユリーカに抱き上げられてしまい、わけもわからないままに頬をすりすりされている。
見ている分には実に可愛いが、ちょっと迷惑そうなイーブイもイーブイには悪いが可愛い。
またやっているよ。と言いたげなシトロンにはおなじみなのだろう。

「ほらユリーカ、イーブイ嫌がってるぞ」
「えー?仲良しだもんね、私とイーブイ」
「そうかもしれないけど。イーブイは名前さんのシツケがいいから大人しいんだぞ」
「んー、そういえばどうして名前さんはモンスターボールにイーブイ入れないの?」
「そんなの名前さんが方向音痴…す、すいません」

やばい!そう思ったシトロンは慌てて口を閉ざす。
実際名前が方向音痴なのは事実で、怒ることでもない。馬鹿にされているとうわけでもないし、何より自分より年下で本当の事を言ったまでだ。
ごめんなさい。としょんぼりされてしまえば怒る気も起きないというところだ。

「いいのよ、本当のことだし。それに私そのモンスターボール持ってないから」
「え」
「…へ?」
「だから私のポケモンというより、お友達なのよね。こんな私に付き合ってくれている大切なお友達」
「うそ…じゃあ、イーブイ野生なの?」
「野生といっていいのかな…うーん」

ユリーカは自分が抱いているイーブイをまじまじと眺めてはシトロンとアイコンタクトをとって何かを相談している。
何かを訴えては頭を左右に振ってみたり、頷いてみたり。さすがは兄妹と言う感じだ。名前にはさっぱりわからない。

「名前さん、これからポケモンセンターに行きましょう」
「え、な、どうして?」
「どうしても!!いいから、お仕事終わりでしょ」
「え、うん。そうだけど…。でもジムはどうするの」
「今日はもうおしまーい!というか、そんな暇ないよ!!あ、お兄ちゃんどうせなら専門店行こうよ!!可愛いボールにしようよ」

ぱっとイーブイを下して名前の手をがっちりと掴んだユリーカは名前が逃げないようにと力を入れる。それを見たシトロンは「ではジムに今日はおしまいの準備を!」とちょっとよくわからない事を言って走っていってしまった。

ただ名前にわかることは「あ、なんかこれもしかして不味い展開?」ということだ。

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