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鶺鴒 (21/21)
葦牙くんの憂鬱4/草野(+α)


小さいモノが好きだ。
決して性癖ではない。
癒しとして、だ。


葦牙くんの憂鬱


「くーちゃんは良い子だね…」

「う?くー、いいこ?えらい?」

「うん、良い子、偉いよー」

「名前ちゃんも、いいこ!くーとお話してくれるし、あそんでくれるも」


今名前は出雲荘に来ている。
久しぶりに大家さんのご飯が食べたかったのと、それを察してくれたかのように大家さんが連絡をくれたのだ。
そして今、名前は子守をしている。
子守とはいえ、相手は他の葦牙のセキレイ。
普通に考えたら危険かもしれないが、この出雲荘ではそのようなことはない。


「名前ちゃん、名前ちゃんは、ふーちゃんのお兄ちゃんなの?」

「んー、お兄ちゃんじゃあないよ」

「違うの?くーのお兄ちゃんと違う?」

「葦牙ってこと?」

「うん。ふーちゃんの、お兄ちゃん!」


お兄ちゃんという響きには少々抵抗はあるが、草野の言うお兄ちゃんは葦牙を意味している。
一応…確かに風花の葦牙だ。
しかし「お兄ちゃん」というような間柄ではない。
それを草野に言ったところで幼いこのセキレイは理解してくれないだろう。
これがもし自分に風花一人(羽?)だけセキレイだったならばまた話は違ってくる。
それこそ“運命の相手”という乙女がときめくような言葉で表せたかもしれない。


「…お兄ちゃんでは、ないけど葦牙だよ」

「そーよ。名前くんは私のお兄ちゃんじゃなくて、ダーリン」


ね。とウインクと色気をまき散らしながらやって来た風花。
風花の姿をみた草野は「ふーちゃんだ!」ときゃあと声を上げて喜んだ。


「ふーちゃん!」

「久しぶりぃ草野ちゃん。元気だったぁ?」

「うー!」

「そう。でもぉ、私のダーリン独り占めは許せないわぁ」


うふ。と笑う風花の目が座っていたのは名前だけの秘密にしておこう。

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