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鶺鴒 (19/21)
葦牙くんの憂鬱3

「やっだぁ、名前くんたら他にもセキレイいたのぉ?」


心なしか、いや、確実に名前の顔色が悪い。


葦牙くんの憂鬱3


「えー、鴉羽に陸奥ぅ?趣味悪ぅい。あ、名前くんのことじゃないんだからね」

「いや、もう…はい」


名前に抱きつきこれ見よがしに自慢の胸を押し付ける風花。
あまりにも自分の葦牙にくっ付くものだから不満そうにする鴉羽と陸奥。
名前の最初のセキレイの鴉羽は心中穏やかではないのは見てわかる。
表情はいつものように何を考えているかわからないが、オーラがどす黒い。
陸奥は陸奥でいつもの仏頂面に拍車がかかっている。


「陸奥の次は、No.03かい?」

「やっだ嫉妬?まあ、お姉さん受けて立っちゃうわぁ。ね、名前くん」

「いや、受けて立たないでくださいよ風花さん」

「やーん敬語。風花って呼んで。ね?」


私の葦牙なんだからぁ。と嬉しそうにする風花に反して徐々に元気がなくなる名前。
そういえば陸奥の時もそうである。
そもそもセキレイが増える度に気苦労が増える名前。
最初の鴉羽の時はわけがわからない。
次の陸奥もそれに加え、鴉羽の嫉妬が。
無駄な対抗心が二人(羽?)芽生える始末。
そして出雲荘の仲間だったオネエサンが加わってしまった。
風花の性格は出雲荘に居たときからだいたいわかっている。
だから名前はこんなにも気落ちしているのだ。


「ねえ、No.03。ちょっと名前に抱き付きすぎじゃないか」

「あらぁ、別にいいじゃない?私の葦牙だもの。そうそう、私も名前くんのセキレイだから、よろしくぅ」

「新入りなんだから、少しは遠慮したらいいんじゃないか。仮にもこの中で一番後に入ったんだ」

「陸奥の言う通りだよ」

「えー?そんなこと言ったら、私と名前くんは貴方達よりも良く知ってるわ?出雲荘の頃からよーく、よぉく知ってるのよ?」


女の子の趣味とか。と勝ち誇ったように笑う風花。
それに対抗心を燃やしたのは鴉羽。
一応葦牙と異性というところで負けられるか。と思ったらしい。
それに疲れた名前は風花から逃げるように離れ、同性の陸奥に近寄った。
同性である陸奥にはその戦いに入るつもりはないし、入ったとしても対抗する術がない。
風花のような豊満な胸もなければ、鴉羽の様なスレンダーが体つきでもない。
それに葦牙である名前に恋愛感情の様なものは皆無だ。
あるのはただ、名前がしあわせで、自分が側にいれたらそれでいい。


「…増えたな」

「…ああ」

「頑張れよ」

「陸奥、お前もな」

「…?」

「いいのか悪いのかわからないけどセキレイが三人…三羽?になっちゃった中で唯一陸奥だけが男だろ。あんな濃いのに囲まれたらそれこそストレスで胃がやられる」
「…それはお前も同じだろ」

「……そう、だな。でもこっちにくるのは好意だけど陸奥は違うだろうからな。心配してやってんの」


…そうか。少しだけ陸奥は心の奥底が暖かくなるのを感じた。
これが一応幸せというやつなのだと。
大切な葦牙を心配して、心配されて。少し、ほんの少しでも自分を心配されるということはこんなにも嬉しいものなのかと。

しかし、そんなホンワリとした陸奥の心の余韻は長くは続かなかった。


「ちょっとぉ、抜け駆けはよくないわ。私も名前くんとイチャイチャしたぁい」

「いや、イチャイチャしてないし」

「No.03、No.05。ちょっと二人とも外行こうか」


これから起こり得る事にはため息しかでなかった。

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