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鶺鴒 (15/21)
発情期ってやつですか。/焔

女葦牙





「好き、好き。大好き愛してる」

そんなことをいうものだから、いったい何事かと篝こと焔は固まった。

発情期ってやつですか。


「え、ちょっと…なに?どうしたの、いきなり」

「なぁに?私が好きとか愛してるとか言っちゃあ駄目なの?篝は私の事嫌いなの…?」

「いや、そ、そんなことない…けど…」


いつもは焔が名前にそんな甘い言葉を囁いたなら、名前は止めろと言わんばかりの冷たい視線を送る。
名前はクールというわけではなく、そういう事に関しての興味も関心もないのだ。
どうしてそんな女性と婚ないだのかは、それこそ焔自身にもわからない。
ただ、名前が自分の葦牙だと感じたがら。としか言い様がない。
一緒に歩くのも嫌がったり、買い物だって荷物持ちとしてしか連れてはくれない。
何故かと聞いたら「彼氏と思われたら私が迷惑だから」となんとも焔としては悲しい答え。


「ど、どうしたのかな?」

「篝がね、好きなの。大好きなの、愛してるの」

「あ、ああーうん…」


熱っぽい目で、じーっと焔を見つめる名前。
名前のセキレイの焔としては、凄く嬉しい。
グロスで濡れた名前の唇がやけに色っぽくて、厭らしくて。眩暈がする。


「ねぇ、篝…ううん、焔ぁ」

「…う、うん?」

「ちゅう…しよっか」

「…え?」

「ちゅーう、キス。…いや?」


いつもの名前じゃない。
それだけはわかる。
名前が甘えるはずはない。
甘えるはず…ない。


「焔…」


名前の吐息が聞こえる。
熱っぽい、甘い息遣い。
葦牙に甘えられて嫌なセキレイは、いない。
しかも羽化をも促す粘膜接触。
それが嫌いなセキレイもいない。

迫る名前、ただ名前の顔、唇を見るだけの焔。
名前の唇まで少し。


「…へ?」


あと数センチ。というところで名前の軌道がそれた。
そして焔に覆い被さるように倒れ込む。
それに目を白黒させる焔。
いったい何が起こったのか。


「…名前?ちょっと、ねえ」


動かない名前。そしてかすかに香るアルコール。
ただ名前は焔の上で気持ちよさそうに寝息を立てている。


「アルコールの匂い…。飲んだんだ…名前」

「…ん」

「名前は酔うと甘え癖でるの?」

「………」

「ねえ、好きとか愛してるって本心?嘘…じゃあ、ないよね」


何の反応もない名前。
名前に押し倒された焔としては嫌な気分ではないが、供え膳喰わねば男のなんとやら。
これからどうしたものかと焔は悩んだ。

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