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鶺鴒 (9/21)
きみがくれた存在証明 /秋津

拾った。と表現したらいいのだろうか。
ついて来た。とでも同じ、もしくは同等の表現になると思う。
それが猫とか犬なら、良かったのに。
それが人だったから、こんなにも困っているのだ。


きみがくれた存在証明


「おかえり…」

「ただいま秋津。いい子にしてた?」

「ん。これ、ぽすとに入ってた…」


成人女性と思われる人にこんな事を聞くのはおかしいのは重々承知している。
それが普通であればの話だが。

言わば彼女は普通じゃないのだ。
額には変な刺青が入っている。
それに色素がやけに薄い気がするし、何よりなにもないところから氷をだすのだから。
ついでに加えるなら秋津は最初シャツを羽織っただけの格好。
今は買い与えたごく一般的な格好をしている。
そのおかげで額が異様に浮いているから外にはだせない。


「あれ、宅配の…」

「たくはい?」

「うん、ちょっと待ってね。電話するから。それからご飯にしよっか」


うん。と頷く秋津。
彼女が来てから、今ではなんとなく考えていることや感じている事をわかる気がする。
さすがにいきなり押し倒されてキスされた時は驚いたが。

電話して、宅配がまたくるまでの時間はご飯を作り、二人で食べた。
秋津は料理はできないが後片付けはできるとその役目を貰ってせっせと遂行する。
そうしていると荷物が届き、見れば差出人はMBI。


「怪しい…あれ?」

「名前、どうした…?」

「これ、秋津のオデコと同じ模様だ」

「鶺鴒紋」

「セキレイモン?なにそれ」

「多分、私に関係するの、入ってる」


早く開けろと言わんばかりに荷物に熱視線を送る秋津。
若干その熱視線に気圧されながらも開封すると、そこには着物と手紙が一通。
その手紙に名前が気を取られている間にも秋津はその着物をジーッと見つめるだけ。
手を出そうとはせず、まるで飼い主の「よし」がなければ動かない忠犬のようにしている。


「…は?セキレイ?ナンバー?廃棄?」

「……自分、廃棄ナンバー。羽化できない」

「羽化って…虫じゃないんだから」

「葦牙」

「アシカビ?カビの一種?」

「マスター」


カビマスター…細菌博士?と頭を傾げる名前。
まあ、秋津のいうことだから。とあまり気にしないでおくことにした。彼女はたまに意味不明な事を言うからだ。
気を取り直して手紙の続きに目を通すと、荷物は秋津へ。と最後に綴ってあった。


「この荷物、秋津にだって。デフォルト?」

「…着物」

「鎖…?」

「着る」

「秋津、着替えはあっちで。ここでしちゃダメ」


うん。と頷いた秋津はノソノソと着物を持って部屋を移動して着替えはじめる。
そもそも着物と鎖の組み合わせがわからない。と頭を傾げる名前。
それにデフォルト。

ゲームの初期装備かよ。

思わず突っ込みたくなる一文だ。


「名前…着替えた」

「……また、一般離れしたな」

「名前、決めた。名前をマスターにする」

「そんないきなりカビマスターにするって任命されてもっ!!いや、もしや目指せポ○モンマスター的な!?」

「…カビ、マスター?」

「アシカビってカビの一種じゃないの?」

「葦牙、カビじゃない」

「じゃあ、なに」

「……、なんだろ?」

「…………」

「とにかく名前は葦牙、マスター」


決めた。
と何かに秋津は名前を任命した。
御題提供:確かに恋だった

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