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鶺鴒 (7/21)
きみ不足が深刻です/御子上

セキレイ女主




「ねーねー名前!」

「なに、どうしたの」

「見て見て!多姫に描いてもらったんだ!!」

「…鶺鴒紋?なんで」


名前は御子上の初期のセキレイだ。
順番にして陸奥の次くらいか。
落ち着いた物腰で、御子上には甘えられ、時には厳しくするまるで姉だ。
それは他のセキレイにも同じで仲良くやっているが、たまにそれが嫉妬に変わったりもする。
セキレイからも、御子上からも。
御子上にかまえばセキレイからは「名前ばっかりズルイ!私も一緒にいたい!」と言われたり、「名前ばっかり贔屓だ!」と言われたかと思えば「御子さまばっかり!私も名前とお話したいよ!」と逆の嫉妬まで。
その逆にセキレイ達と一緒にいれば御子上から「ちょっと、名前はボクのセキレイでしょ!」と無駄に怒られる。

その苦労を話せるのは同じく御子上のお気に入りの陸奥。
彼も同じように苦労している。
立場が少しばかり違うが、似たようなものだ。
陸奥の場合は周りが女性ばかりで苦労や御子上のお気に入りでの嫉妬。
名前は陸奥の次に御子上のセキレイになったがあるが故に付き合いが長く、それに加えて世話焼きで皆から好かれたが故の嫉妬。
二人にしてみたらそんなことでいちいち口論をするなと言いたい。

言わば同じような境遇の二人。
苦労人仲間なのだ。


「なんでそんなの描いたの。ほら、消してあげるからこっちにおいで」

「だめー!消さないよ、消しちゃダメだよ!」

「隼人は葦牙でしょう。鶺鴒紋はセキレイだけにあればいいの。…もう、多姫も多姫ね」

「いいの、消さないったら!こればボクが頼んだの!」


名前に見せていた鶺鴒紋を慌てて手で隠す御子上。
どうせセキレイ達と悪ふざけで描いたものだと思っていた名前。
ムキになって起こる様子をみると、御子上は進んで描かれた、いや、描かせたのだろう。


「今日はボクがセキレイだよー」

「隼人は葦牙でしょ。そんな遊びしてると他の子達にまた変な遊びに付き合わせられるから」

「大丈夫だよっ。あ、葦牙の役は名前ね」

「?」

「今日はボクがセキレイ役で名前が葦牙役!マスター!」


わーい!と名前に抱き付く御子上。
名前はセキレイであるから葦牙である御子上には親愛がある。
抱きつかれて嬉しいことは嬉しいが、御子上が何か企んでいないか不安になる。


「マスター、ちゅうして。ちゅう!」

「隼人」

「ちゅーうー!葦牙命令だよ」

「…今さっき私が葦牙役って言ったばっかりでしょ」

「あ…!」

「もう」


甘えてくる御子上は可愛い。
キスをねだられ、仕方なく額に唇を落とすと御子上は「そこじゃないよ!」と顔を赤くして文句を言った。


「…隼人」

「……なに」

「急にどうしたの。陸奥と一緒じゃないの?」

「陸奥は自分の部屋」

「隼人」

「…最近名前ボクのトコに来ないじゃん」

「隼人がセキレイ集めにお熱だったから」

「それだけじゃないし…セキレイ達と一緒にいたし、陸奥と仲良しだし」

「隼人がセキレイ集めで集めた子達に色々教えなきゃだから。ほら、秋津。あの子ちょっと世間知らずだから色々面倒みてあげないと」


名前の一言一言にヘコむ御子上。
そもそも御子上のコレクター魂で首を絞めていたのだ。
それは陸奥にも「いいかげんにしろ」と言われていた。
でも止めないのは集めるのが楽しい。
そういえば陸奥も「増やし過ぎると名前が大変だぞ」と言っていたことを今思い出した。


「もしかして…僕、自滅?」

「ん?」

「名前が…僕のトコ来なくなったの」

「んー、言うなら、隼人が無駄にセキレイ増やしちゃって、その対処を私がやってるから隼人の所にいけないかな」

「………」

「…隼人?」

「今日は名前にご奉仕するよ!どんとこい!」


きみ不足が深刻です



御題提供:確かに恋だった

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