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鶺鴒 (6/21)
僕が助かる為だから/紅翼

連載女主Ver
まとめ髪 続編



「あれ、どうしたのその髪」

「ああ、これ?名前が、ね」

「へえ…可愛いね、似合ってるよ」


…似合ってる?
……可愛い?
今夏朗可愛いって言った?


僕が助かる為だから


「名字ーーー!!!」

「…どこでも構わず走らない、叫ばない」

「うっさい!!」


呆れた名前にはお構いなしに椅子に座っているそこに紅翼はすごい形相で詰め寄った。
それこそ映画かなにかだっだら壮絶なBGMがついただろう。

そんな紅翼の姿に名前は「また何かいちゃもんつけられるのか」と内心溜め息をついた。


「…あんた、黒の髪をいじったんだって?」

「黒…ああ鴉羽」

「……それ、夏朗が見てさ」

「……?」

「か、可愛いって…言ったんだよ」

「へえ…そんなこともあるんだね」


最初の迫力はどこに行ったのか聞きたくなるほどの声の小ささ。
しかも顔をゆっくりと赤みを帯び、ばつの悪そうな表情へと変わった。
名前がそんな紅翼を眺めていると、紅翼はモニョモニョと聞き取れないくらいの小さな声を何か言っている。


「…紅翼?」

「ボ、ボク…も」

「……?」

「ボクも夏朗に、可愛いって…言われたい…の!」

「…」

「わ、笑ったな!別に黒に負けたくないとかじゃないし!?ほら、黒は名字のセキレイじゃん!ボクと黒を比べるあたり間違ってるつの!!ほらあ、黒だけが可愛いって言われるのなんか癪なんだんだよねぇ!!」


別に名前は笑ったな訳ではない。
ただ、名前は呆気にとられただけだ。
紅翼が壱ノ宮が好きなのは知っている。それが親愛ではなく、恋愛感情だということも。
灰翅にライバル心むき出しの時を多々目撃している。
その嫉妬心が鴉羽の髪型を見て可愛いと言ったことが気に食わないのか、羨ましかったのかはわからないが、ただ自分も言ってほしいのだ「可愛い」と。


「で、どうしたいの?」

「へ?」

「どんなのがいいの」

「か、可愛いの!黒よりも!!」

「紅翼、それだと漠然としすぎ。よし、ファッション誌買ってこよう」

「な、なんで?」

「それ見て紅翼の可愛いのを探して、ついでにメイクもしよう」

「でもそんな可愛い服とかない、し」

「マネーカード、あるでしょ。それで服もメイク道具もその他諸々揃えたらいい」

「だって懲罰部隊だし…」

「それじゃ壱ノ宮さんとデートの約束取り付けてからこい」

「デート…?………デートォ!!!!」


いつもの紅翼とは打って変わって狼狽えるのを名前は「恋する乙女は可愛いな」と見ていた。

御題提供:濁声

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