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鶺鴒 (23/23)
22

「名前、ゆーちゃんにまた会いたい?」

「会わなくていいって言ったら嘘になる」

「会わせてあげようか」


見舞いの帰り。
読めない表情で鴉羽は名前に聞いた。


「…どうやって」

「簡単、最後の一羽になればいい」

「…」

「どう?簡単だろう。結から結女を引きずり出すより、よっぽど簡単だ。結が結女を超えるのを待たなくていい」


そうしたら名前は嬉しいだろう。
クスクスと笑いながら抱きつく鴉羽。


「それで自分は結女を倒す。それで名前のセキレイは自分だけになるね」

「…そう、だね」

「ああ…楽しいだろうな結女との殺し合い」


そうか。
名前はなんとなくではあるが鴉羽は自分と似ているのだと感じた。
過去に捕らわれている。
結女にすがっている。


「鴉羽、もう結女に拘るの止めよう」

「どうして、結女は名前の最初のセキレイじゃないか。会いたくない?」

「結女はもういない。結女は過去。結ちゃんは結ちゃん、結女じゃない」


だから。

それ以上名前は言葉を続ける事はしなかった。
多分、名前と鴉羽の関係性からいって名前の言いたいことは鴉羽に通じている。

名前から鴉羽の表情は見えないが、少し不満そうだ。


「ねえ、知ってる?最後の一羽とその葦牙の話」

「ご褒美の話?」

「そう。その話はね、葦牙だけじゃくセキレイもご褒美がある」

「…で?」

「自分はね、強いのと戦いたい、殺し合いたい。だから自分は結女の復活を願うよ。名前が望まなくても」

「それじゃあ、こっちは鴉羽が幸せになれるように願うよ」


鴉羽が過去に捕らわれないように。
強い存在と闘えるように。


そして結女が、彼女の中で穏やかに存在出来るように。
結女に、好きだったお兄さんに胸を張って、生きていけるように。
全て思い出した訳じゃないけど、前みたいに後ろ向きにならない。
そしていつか全てを受け入れるだけの度量と器になれるように。


結女があの子を助けたように。




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