鶺鴒 (22/23)
21
「こんにちは」
「…こ、こんにちは」
「な、汝…何用じゃ!!」
「…お見舞い?」
片手にケーキを持って病室にやって来た名前。
その病室には先日の脱走計画の関係者が入院している。
佐橋皆人、そのセキレイの結、看病の月海。
「別に襲ったりしないよ。はいこれ、お見舞いのケーキ」
「あ、ど、どうも…」
「皆人!!敵じゃ、敵じゃぞっ!?」
「ケーキ嫌い?」
「〜〜き、嫌いでは…ない、のじゃ」
きいきい騒ぐ月海にそれをあしらう名前。
その二人をみて少しアタフタする皆人。
名前はあの橋の上で結だけど結ではない、「ユメ」と会話をしていた。
それは遠い昔に別れた親しい間柄の様に。
名前は嬉しいような、悲しいような複雑な表情だったのを皆人は覚えている。
「月海、落ち着いて…ね?」
「み、皆人がそういうなら…の。ふん」
「悪いんだけど、佐橋君と二人で話がしたいんだけど、いいかな」
「なぁっ!わ、我は皆人の妻ぞ!夫を守るのは妻の勤めじゃ!」
「別に危害は加えない。ただ、話がしたい」
「我がいてはならぬと言うか!!」
「つ、月海…多分名字さんはそういう人じゃないよ。少し、いいかな…」
キーッ!と騒ぐ月海。
それを必死になだめる皆人。
そんな二人を見て名前は「仲良し」と笑うと、何故か月海の機嫌が良くなって「我は皆人の妻!妻が夫を信じなくて誰が信じるのじゃ!…5分だけじゃぞ」と行って名前を少し警戒しながら部屋を出た。
「名字さん、それでお話って…?」
「…あの、結女…いや、結ちゃんをよろしく」
「…え?」
「結ちゃんと、結女の関係知ってる?」
「いえ…」
「…そっか、結ちゃんはね、自分のセキレイだった結女の意志を受け継いでる」
だから、彼女を大切にして。
自分に出来なった事を。
名前は皆人に頼み込んだ。
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