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鶺鴒 (21/23)
20

「結女…」

「名前…?大きく、なりましたね」


橋が壊れる程の力を持っていた結。
いや、結女といった方がいいのか。
結の中で眠っていた結女が、今目の前にいる。

鴉羽に「ゆーちゃんに会いに行こう。あえるかもしれないから」と曖昧な言葉に乗った名前。
脱走計画を鴉羽と遠くから見ていた。
紅翼にトドメをさされた結を見て心が傷んだが、これもルール。
それがいつ鴉羽に起こらないともわからない。
弱肉強食とはまさにこの事だろう。
しかしそこで終わらなかった。

それで名前は理解した。
曰く付きの意味を。


「ごめんなさい名前…今の私は私ではないから抱きしめて上げられない…居なくなって、ごめんなさい」

「結、女ぇ…」

「大丈夫、ゆーちゃん。名前は自分が護るからね。それに…」


また引っ張り出してあげるから。と背筋の凍る声。

結女は過去だからそれに縋ってはいけない。
分かっている。
分かっているのに。
こんなにも懐かしい。
縋りたい。


「結女、その体は…結、ちゃんのだから」

「ええ」

「結ちゃんに…佐橋君の結ちゃんに返してやって…」


ボロボロと恥ずかしげもなく流れる涙。
その量に比例するように優しく笑う結女。

小さく「ええ。私は名前が、私の葦牙が心優しく、情にあふれた存在であることを誇りに思います」と言うと、名前が感じていた結女の気配が消えた。

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