鶺鴒 (20/23)
19
脱走計画。
そんな計画うまく行くのか?
相手は天下のMIBだ。
そんなことを遠巻きに見て思った。
「あんたの知り合いでしょ、あそこの葦牙」
「…うん、まあね」
「良かったね、あんたに行けって言う命令こなくて」
「そりゃそうだ。下手に情が湧いて逃がしたらこっちの死活問題になるしな」
「……イヤな奴」
「紅翼こそ」
ニヤニヤと寄ってきた紅翼。
何を言うかと思えば、知り合いの討伐やらなくてすんで良かったね。という嫌み。
しかし名前はそれが妥当の判断と分かっている。
あちらもこちらに攻撃できないかもしれないが、それはこちらも同条件に近い。
しかし名前のセキレイは鴉羽。
鴉羽の性格からしてそういったことはないだろうが、名前が嫌がることはやらない。
「まあ?アタシが何があろうと脱走なんてさせないけどー?」
「壱ノ宮さんに誉めてもらうんだろ」
「もち!」
ふふん。と得意げな紅翼を横目に名前は佐橋皆人のセキレイを思った。
No.88結。
結女と関わりあるセキレイ。
曰く付きなどと言われる存在。
鴉羽から聞いた。
結女は居ないが、結の中にいる。
その意味は分からない。
ただ、彼女に近付ければまた結女に会える気がする。
大好きだった結女。
ある日突然居なくなってしまった存在。
「…紅翼、行く」
「はいはーい。じゃ、あんたはここで指くわえて知り合いの遣られる様を見てたらいいよ」
意地悪い笑みで部屋を出る紅翼。
それを名前は手を振って見送った。
「名前、どうする?」
「鴉羽…いつからそこにいたんだよ」
「ついさっき」
含み笑いで名前の後ろに立っている鴉羽。
さあ、どうする?いく?結女が、ゆーちゃんが来るかもしれないよ?
その言葉に名前は固まった。
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