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鶺鴒 (19/23)
18


「鴉羽、ユメを…知ってるか?」

「No.08かい?」

「…たぶん」

「知ってるよ、ゆーちゃんの事なら」


出雲荘から帰った名前の問い。
ある程度予測はしていた問いだったが、それは鴉羽の予想を少しそれていた。
鴉羽の予想として、聞かれると思っていたのも浅間健人の事。結女のことでは無かった。


「ゆーちゃんの葦牙だったじゃないか、名前は」

「…そう、か」

「あんなに仲良くしてたのに」

「覚えてないんだよ、そのユメの事。それに健人さんの事も。その事を美哉さんに聞きに行ったのに、あったことを聞いたのに、覚えてない」

「………」

「思い、出せない」


いつもの落ち着きが少し揺らぐ名前。
堂々といつもしていたわけではないが、それなりに落ち着いていた名前が少しながら取り乱している。
それは酷く鴉羽に人間らしくみえた。
どこかに感情を現すという行為を忘れたような気さえする時がある名前が、狼狽える。
それは鴉羽にしてみたら、初めて見る名前の姿に近い。


「…浅間健人はね、自分の調整者でね。まっどさいえんてぃすとってヤツなんだって」

「マッドサイエンティスト?」

「自分もよくわからないんだけど、そう言ってる奴がいたからそうなんじゃないかな」

「…まあ、そんな風に言われるくらいだから伝説作ったんじゃないの?シングルナンバーの」


神座島の?と名前が問えは頷く鴉羽。
鴉羽も名前がどのくらいの事を知っているのか知らないが、自分の答える事が出来る範囲内で名前の疑問に答えてやろうと言葉にした。
これが初めて名前に求められた事だと思ったから。


「それに自分と名前は神座島で会ってたって、知ってた?」

「…いや」

「そうだよね…その様子だし。それに子供なんて興味なかったから関わり持ちたく無かったからね、知らない、いや、覚えてなくて当然かもね」


薄く笑いを浮かべる鴉羽に、少し呆れた様子の名前。
そういうところが鴉羽らしいと言えば、らしいのだが。
あまりに堂々と関わりたくなかった。と言われるとそれなりに傷付くわけだ。
しかし、それももう慣れてしまった。


「むしろね、嫌いだったよ」

「…なんで」

「結女を取られたから」

「とられた?」


意味が分からない名前に鴉羽は「分からないなら分からない方がいいよ」といつもの調子で笑った。

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