鶺鴒 (17/23)
16
「…セキレイ、計画」
「そうです、健人たんは鶺鴒計画の一端を担ってたんですよ」
「…セキレイ計画って?」
「そんなもんNo.04に聞いたらいいですよ。懲罰部隊なんだし」
「…松、鴉羽と知り合いなんだ」
ふうん。と黒いものを感じさせる名前。
別にに名前にそのつもりは無かったが、松は「ヤバいです、はめられました!」と一瞬にして顔色を悪くした。
名前にしてみたら松はただの天才ハッカー。
社内から堂々とそれに関して調べたくなかった名前は松の力を借りようとして出雲荘に来ただけだ。
「で、鴉羽とどういう関係?」
「か、カラスバって誰ですぅぅ?」
「今No.04っていったよ、ね?」
「えええ?松わかんな「松」…はうああああぁ」
「そのくらいにしてあげてくださいな、名字さん。いえ、名前さん」
名前に怯える松を助けるかのように現れた美哉。
それが松の助けになるかは、わからないが。
「大家さん…」
「もう店子ではないんだし、美哉でいいわ。私も名前さんて呼ばせてもらいますから」
「美哉たん、松悪くないですから、悪くないですからぁぁぁ!!」
溜め息をついた美哉は松の部屋から客間へ名前を通した。
そこには先ほどいたはずの数人は居らず、テーブルと座布団。
落ち着いた表情で美哉は「ここでお話しましょうね」と名前を座らせた。
「健人さんのこと、聞きたいの?」
「はい」
「…覚えて、ない?あんなに仲が良かったのに」
「……実は、最近まで忘れてました。ただ、この前夢を見たんです」
「夢?」
入院していたことは伏せて、内容を説明した。
自分が誰かを探していたこと、その人物がいなくて泣いているのを親戚の浅間健人にあやされたこと。
そして会社の人に「浅間健人」が何かを知っているかを聞かれたこと。
「そう…」
「夢を見るまで忘れてました。あんなに大好きだったお兄さんなのに…」
「………」
「でも、夢を見て思い出した…のかもしれないですが、もっと好きだった人がいた気がしてならないんです」
「ねえ、名前さん。あなたは…」
知る権利がありますから、教えますよ。
浅間美哉は真剣な声色で聞いてきた。
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