鶺鴒 (12/23)
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泣いてる。
これは、幼い自分だ。
なにをこんなにもわんわんと泣いているのだろうか。
子供なんて泣くのと食べるのと甘えるのが仕事のような存在だが、これは異常、尋常の泣き方じゃないと思う。
「ほら、名前。そんなに泣いたら××が悲しむよ」
「××は名前が嫌いになったんじゃないよ、むしろ名前のこと大好きだったんだ」
誰だっけ。
知ってるハズなのに、思い出せない。
「美哉、名前が泣きやまないんだ」
「名前、そんなに泣いたら××が名前を嫌いになってしまいますよ。××は名前がいい子にしていたら、また、会えますよ」
ああ、そうだ。
確か親戚の人だ。
一応、両親のいない自分を引き取ってくれたっていう。
大家さんは自分の親戚の人と結婚してたんだっけ。
…そういえばなんで親戚のあの人のこと覚えてないんだ?
なんで大家さんはあの人がいなくなってからも自分を育てくれたんだ?
××って、なんだ?
どうして聞き取れないんだ。
「名前…」
「なあに?名前」
「葦牙だもの」
「私もだーいすきよ。名前が私を思うよりも私が名前の事大好きよ」
今度は笑ってる。
誰だ、この人…?
ああ、見たことあると思ったらあの子じゃないか。
出雲荘にいたセキレイの。
…いや、違う。
着ているのが鴉羽と同じだ。
顔付きも、なんだか違う気がする。
…誰だ?
どうして、幼い自分と一緒に居るんだ。
なんで、葦牙って…。
「ゆ×ちゃん」
…もう少し、
「ゆ×ちゃん」
もう…すこ、し…なんだ
「名前、ほら、起きて」
「うん、ゆ×ちゃん」
ああ、
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