鶺鴒 (10/23)
09
「え、No.4羽化したですか?」
「はい」
「No.4?」
「鴉羽様ですよ、皆人さん」
「ま、まじですか?ああああ…No.4まで…ついに」
「えっと、今日一緒にきてた人が葦牙様だそうですよ」
ニコニコ笑う結。
それに反して青ざめる松に、驚いた様子の皆人。
「え、名字さんが…?」
「名字?名字ってもしかして名字名前たんです?みなたん」
「うん。あ、そっか。名字さん前ここの人だったんだっけ」
それは名前と鴉羽が出雲荘を出てからのこと。
日も落ちてから数刻という頃合い。
ふと漏らした結の一言で松が出てきて二人の会話を遮った。
「あうーよりにもよって名前たんとは…」
「何かまずいの?」
「マズいの?って、みなたん…。名前たんも葦牙ならばみなたんも葦牙なのですよ」
「…あ」
「いつかは戦わくてはなのです…。松やかが…は名前とお友達で仲良しさんでした」
何か言いかけた松であったが飲み込んだ。
それに対して皆人は疑問に思いはしたが、それほど気にしなかった。
確かに知り合いが敵になってしまうのは悲しいし、仲良しであったなら尚更だ。
それに結も知り合いのセキレイが羽化したとなれば戦う日も近いのかもしれない。
「…もしや名前たん、いきなりここ出たのは…」
「松さん?難しい顔してどうしました?」
「な、なんでもないですよ、結たん」
後でハッキングしてみると見事に名前はMBIの社員となって登録されていた。
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