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pkmn2 (20/20)
グッバイ

「どうして帰るっていうのに家に招いてバーベキューなんてするかな!」
「オレ達アローラの博士の家で飯食ってきたぞ?」
「バーベキューみたいに匂いついたりしないでしょ!!」

信じらんない!とご立腹なソニア。
シュー!と消臭剤、いや、制汗剤で煙臭いのをどうにか誤魔化せないかと名前に振りかけている。
今日アローラに戻るのだと言ったらソニアが一番顔色を悪くして「どうしてそれ今言うの!ああああ、もう!煙臭いじゃないの」とバタバタと名前についた匂いをどうしようかと誰よりも気にしていた。

「着替えは!?」
「キャリーケースにあります」
「どうしよう…一度シャワー浴びる?家ならちょっと遠いけどすぐ行けるよ」
「いえ、そんな時間はないです。そろそろ空港向かわないと」
「は!?嘘でしょ!?」
「あ、そうだな。そういう時間だな」
「こここここんな煙臭い身体で…!?」
「そんなに臭いですか」
「ソニアのそれでもうだいぶフローラルになってんぞ」

ケホケホと名前が少し咳込み、キバナが鼻を押さえながらソニアに言う。
言われてからソニアは名前の頭、肩、背中とクンクン匂いを嗅ぎ、難しそうな顔してから「………妥協、するか」とまるで罰の用だったスプレーシャワーが終わった。

「着替えて」
「え」
「着替えるの。少しでも煙臭いのを誤魔化すの、女の子でしょ!」
「えー…いや、出ないと飛行機が…」
「あああもう!なんで本当にこんな時にバーベキューなんてするのよ!ダンデくん!」
「オレか!?…ああ、オレだな」
「フライゴンで飛んで空港まで行けば匂いも取れるんじゃねえ?」
「…なにそれ、天才か」
「博士落ち着いてください。アーマーガアタクシー使います」
「…は!そうだよね」
「ソニア!名前選手の飛行機の時間!!」
「ああああもう!ガム持ってるからコレ噛んで!荷物はダンデくんとホップが持つ!行くよ名前!」
「え、あ自分で持ちます」
「いいから!」
「オレ様は?」
「好きにして!」

仕切り始めたソニアに誰も文句を言う間も与えずに次々に指示を出してダンデの家を飛び出す形になった。
庭で後片付けをしていたダンデの母親に「ご馳走様でしたー」とソニアに引っ張られる格好のままお礼を言えばニコニコとして「またおいでなさいなー」と手を振ってくれた。
どうやらこういうドタバタとしている事には慣れている様子。
アーマーガアタクシー乗り場までの道に何度も道を間違えそうになったダンデにホップが「アニキこっちだぞ!」とか「ダンデ逆だ逆!!」に「そっちじゃないよダンデくん!」という声を何度も聞く事になった。言っておけばほぼ一本道というくらいの田舎道で何故そんな風になるのだろうか。


はあはあ…という名前以外の疲れた呼吸音が静かに流れる。
時間は名前が予定してた時間よりも早く到着した空港。名前の格好もまあまあ酷いが、それ以上に名前を連れてきた面々の疲労が酷い。
ソニアはタクシー内でも「そんな無頓着じゃ駄目だよ!なんで!?」と酷く名前がそんなに気にした様子がない事にワンワンと一人でヒートアップして名前に詰め寄って一人で疲弊しているのだが。

「み、みなさん、どうもありがとうございます…した?」
「いいから搭乗手続きして!男衆はここで待機!あ、でもホップは名前の荷物持ちでついてくる!残り二人は待機!動かないで!!」

ほら行くよ!とダンデの代わりに名前の荷物を持っていたキバナからソニアが奪ってホップに持たせて、残りの荷物はソニアが持って名前を捲し立てるように手続きに向かう。その姿を男二人はただただ見送る。
予定ではもっとスマートにするはずだったんけどな、というキバナの言葉にダンデは笑って「そうだな」と答えていた。
暫くして手続きが終わったのかソニアが安心した顔をして名前とホップを連れて戻ってくるが、後ろの二人は疲れている。

「終わったよー。これで安心安心。いやーこんなに焦ったの久しぶりだったわ」
「ソニア…まだ時間あったのに急ぎ過ぎだぞ」
「何言ってんのよ。国内ならまだしもアローラに戻るのよ?不手際があったら大変じゃない!」
「おーいソニア。後ろ後ろ、名前げっそりしてんぞ」
「え!あ…ごめん、急ぎ過ぎた?やっぱり」
「いえ…なんというか、慣れてますね」
「そう?まあアローラには前にも行ったことあったし、また行きたいなって思ってたし。他にも空港使った事もあったからね」

少し休憩しようか。というソニアの言葉に反対する者は誰もおらず、降り立った初日に使ったカフェを利用することにした。
その間に名前はアローラに戻るために着替えることにした。アローラの気候とガラルの気候は違うので、ここではジャケットが必要なのでジャケット以外はアローラ仕様にして。

「名前、カフェラテでよかった?」
「はい、ありがとうございます」
「で、なんでキバナは名前がカフェラテだって知ってたの」
「ここ初日に使ってたんだよ」
「ご馳走していただきました」
「そう…そのジャケットの下アローラ仕様?アローラ良いよね!暖かくて海キレイだし」
「名前は海に囲まれてたところでポケモン保護してるんだぜ」
「じゃあ名前選手はポケモンに囲まれているのか!?いいなーオレも行ってみたいぞ!アニキから見せてもらったあの写真の所だな!いいなー!」
「是非。そうだ、コレ名刺なので使ってもらえれば私に直接連絡が来ます」
「おお!名刺!」
「え、なに?オフなのに名刺持ってんのお前…」
「到着して着替えた時に名刺が入ったままで無くしそうだと思ってジャケットに入れて忘れていたのを思い出したので」
「エーテル財団…強そう」

暫くカフェで雑談をしていると搭乗準備が出来たとの放送がかかったので、皆で名前を見送る準備にかかる。
荷物はすでに飛行機の中だし、名前があとは最終手続きをして乗るだけだ。
歩きながら「今度はもっと余裕をもってしないとね。まあ今回は特別なんだろうけど」という鋭い指摘。

「よし!じゃあね名前!今度来るときは私に教えてね、この男二人じゃ行かないところ案内するから!」
「はい、ありがとうございますソニア博士」
「オレ、アローラ行ったらそのエーテルなんとかに行くからな!」
「エーテル財団、エーテルパラダイスにてお待ちしています。あとダビングありがとうございました」
「また君とバトルが出来て良かった!またバトルしよう!」
「…できれば遠慮します…」
「あ、そうだこれオレ様のポケスタのアカウント。フォローよろしくな」
「あ、ズルい!私も…スマホは?」
「持ってないです」
「え!?うそ!……ああん、もう!キバナくん私のアカウントフォローして!名前、買ったらで良いからポケスタ入れてキバナくん経由で私のフォローしてね。それで私もフォローするから」
「ふぉろー?」
「嘘でしょ!」

再度名前が乗る飛行機の案内が流れていかないとなので、ソニアがあわわとしているのを少し申し訳ない気持ちで名前はその場を離れる。
ホップが「じゃーなー!!」と大きな声で手を振る姿に振り返り、名前も同じく振り返す。

「ありがとう。さようなら」

最後に持たされたキバナのアカウントが書かれたメモを見ると、サイン入りでアカウント名が入っている。
名前にはポケスタというものになじみが無いので、何かよく分からない。
しかしあれだけソニアが熱心だったのだから何か凄いモノなのだろう。でもキバナが炎上とかなんとかと言っていたし、名前も炎上の意味を知ってはいる。
色々あったガラルでの旅行ももう終わってしまった。あとは帰るだけ。
楽しかった様な、ただただ慌ただしかった様な。
邪魔をされて名前がしたかったモノではないけど、こんな旅行も悪くないかもしれない。
飛行機の座席に座ってうつらうつらしながら、ガラルでの出来事を思い出しながら。
名前は目を瞑ってアローラへと戻った。

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