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pkmn2 (18/20)
若い博士と助手

「うおおお!?名前選手だ!」

何故か元チャンピオンのダンデの実家に招待され、バーベーキューをすることになっていた。もう考えることも面倒になった名前は「わーい、嬉しいなー」と心のこもらない言葉で返したのが数時間前。キバナ付きで連行された名前はニコニコした母親と家族でバーベキューを囲んでいた。名前の頭には「何故」という文字が浮かんでいたが、深く考えてはいけないというもう一つの声も聞こえるのでただただ無心にならねばと思いながら。

「ホップ」
「アニキ!名前選手だよな!おおー!すげー!!」
「ダンデの弟のホップに、あれが名前の持ってた本の著者のソニアだ。ここに現チャンピオンが来たら勢ぞろいだな」
「あれ?お客様いるの?」
「ソニア、ああ。紹介しよう、名前だ。あとキバナ」
「どうも初めまして、ソニアです」
「初めまして…あの、本、買いました」
「え!ほんとう!?」
「なあなあなあ!名前選手だろ!?」
「ちょっとアンタは黙ってて!」
「ホップ落ち着け。名前が困っているだろう?まずは食べろ!キバナもいるからなくなるぞ」
「なくならねえわ!」

色濃い面子だとは思っていたが、名前が思っていた以上に色が濃い。
弟だというホップはダンデを幼くした通りという感じで、ソニアは名前思っていたよりもずいぶん若い博士だった。名前にとって博士という称号を持つ人間は今までこんな若い人がいた事が無かった。スタッフであれば違うが、こんな若くして博士になれるのか、という違った方向で驚いた。

「ソニア、名前な、お前の本見て色々まわってたんたぜ。ラテラルタウンとか、案内したのオレ様だけど」
「え、キバナくんが」
「くん…」
「え?」
「あ、いえ…今までキバナさんを"くん"で呼ぶ人がいなかったので…」
「…………、ねえ、本当に案内してたの?」
「オレ様これでもジムリーダーなわけよ、わざわざ他の地方から来た人間掴ませて騙す事しねえよ」
「そうだぜ!バトルタワーのレンタルポケモンの世話とかな!」
「………………大変だったみたいね、あなた」
「わかっていただけますか…」
「わかるよ、すっごくわかる…やばい涙出てきた」
「煙がそっち行ったか?」
「そういう意味じゃないわ!」

あの元とはいえチャンピオンにそういう事が言えるあたり幼馴染である。
そうでなければ気負うのであろうが、ソニアにはそれが無い。そして名前に対して同情してくれたと言う部分が大きい。
そうである、そうなのである。いくらアローラで案内をしたといっても、こんなことになる事がおかしいのだ。何故名前がガラルにいるのか、そしてある意味振り回されたのか、まあでも一部良かったこともあるのだが。腑に落ちない方が大きい。

「なあなあ!オレホップ!名前選手のファイナルのバトル凄かったぞ!録画あるから観よう!初めてのチャレンジでアニキとバトルして、一騎打ち!」
「あー、あの選手なんだ。でも今まで…」
「名前はアローラから来てたんだよ。で、この前ダンデと行ったアローラで会ってな」
「名前にはアローラを案内してもらってな。それで今回はオレ達がと思ったが仕事でキバナに頼んでた」
「じゃあ名前はアローラ出身なのね。アローラ羨ましいわ」
「いえ、アローラに住んでいますが出身は違います」
「そうなんだ」
「あの、ソニア博士。本の事で質問があるのですが良いですか」
「博士…ううん、博士なんて付けなくていいよ。ソニアって呼んでよ。私の名前って呼んじゃったし敬語もなし」
「…じゃあ、質問」
「オーケー」

さっとしまってあった本を取り出す名前。その本には色々とメモが挟み込んであり、それはキバナに連れられて見ている間やホテルで読んでいる時に気になった事を書いてあるのだ。
それを見たソニアは思わず驚いた声を上げる。質問と言っても軽いものだと思っていたのだ。まさかそんなに読み込んだ人間がいるとは思っていなかったのだ。

「……?」
「あ、ううん。なんでも、なんでもない…」
「このページのコレなんですが…」
「アニキー!これ名前選手とのファイナルのやつ!観よう!」
「食事が終わってからでも大丈夫だろ、今ソニアと話してるからな。ホップちゃんと食べて寝ているか?」
「まあな!ソニアにそれ言ってやってよ。毎日頑張ってるからな」

指さす方に居るソニアと名前。
名前の質問に悪戦苦闘しながら答えているあたり、名前の質問はなかなかの手ごわいのだろう。まるでこちらの会話が聞こえていないのだ。
何とか答えたと思ったら名前は頁をめくって「では、こちらの記述には…」と学会か何かなのかと思うような口ぶりで聞いている。それはまるで質問ではなく粗探しをしているのではないかと思う雰囲気である。
博士の本なのは事実で、それが初めての本だろうが何冊目の本だろうが突っ込む人間がいるのは間違いない。そして突っ込んで聞いてくる側の人間が名前だった。
ひい!というソニアの心の叫びが聞こえそうな程の名前の質問攻めになってきたのでダンデの母親が「ほらほら、食べないと他の人が食べてしまうわよ。ソニアちゃん名前さん」と言われてやっと区切りがついた。

「あ、すみません…つい」
「う、ううん…こんなに読み込んでくれている人がいるなんて思ってなかったら嬉しい」
「なあ名前選手!これにサイン欲しいぞ!」
「ホップ!ちょっと名前が食べるところでしょ?もう少し待ちなさいよ」
「今までソニアと質疑応答してたのに…?」
「んぐ…!」
「あの、ごめんなさい。私サインなんてキバナさんが勝手に考えたもので私には書けなくて」
「…なんでキバナさん??」
「名前のアローラではそういう文化がないんだよ。それでオレ様が考えたわけ、でもうちのジムトレーナーと名前には不評でな。ガブリアスっぽくていいと思うんだけど」
「そうか…じゃあ仕方がないな!じゃあ代わりに一緒にファイナルの録画観よう!今でも特集組まれることもあるんだぞ!」

そのまま食べるのをまだかまだかとソワソワされ、なんだか居たたまれない気持ちになりながらご馳走になった。

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