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pkmn2 (15/20)
休暇なんですけど

「ずいぶん遅かったじゃないか」
「うるせー!お前にオレ様の苦労がわかるか!」
「?お、おう?」

あれから小一時間ほど、名前はキバナの存在を無視するかのように本を黙々と読み続けた。それに対して何か物言いたげな気配を感じながらも、黙ったままのキバナを知らないふりを続けていたわけだが。
それに対して名前のポケモンはキバナを快く思っていないのか、キバナが少しでも動くと全員が全員じっと見る。
それについに悲鳴を上げて「バトルタワーに一緒に来てください…おねがいします…」と言われてしまった。
どうやらダンデに頼まれていたらしいのだが、名前の知る所ではなかったのだ。そもそもそうならば最初から言えばいいのだが、名前が早々に「一人になりたい」というので言いだすに言い出せなかったのだろう。だからと言って大見得を切って「オレ様が連れて来てやるよ」なんていうものだから引くに引けなかったらしい。

「おはようございます」
「おはよう!君に見てもらいたいんだが」
「レンタルポケモンですか?」
「キバナから聞いたのか?」
「…それとなく」

実はな、と切り出すダンデ。
ここバトルタワーでは普段ポケモンに触れ合ったり持っていない人の為にレンタルポケモンを用意してバトルに挑戦、そして親しんでもらおうという目的で作られた。しかしそのレンタルポケモンでなかなか人に慣れてくれないものがいるので困っている、と言う事らしい。

「その子、向いていないのでは?」
「向いていない?」
「人でもポケモンのバトルに向いている人、ケアに向いている人、共存する人がいる様にポケモンにもいます。バトルが苦手な子、好きな子、人と遊ぶ子遊べない子。基本ポケモンはボールに入ってしまうとトレーナーの言う事を聞かなければなりません、ただそれを拒否する子もいるというだけです」
「レベルに合わないトレーナーの指示に従わない、ではなく?」
「個性、です。またはトレーナーと合わないか、ですね。ただレンタルというと誰でも使えるようにするんですよね?」
「ああ」
「その子を見たわけではないので何とも言えませんが、その子はレンタルよりも、合うトレーナーにという方がいいのでは」

基本的な事ではあるが、多くのトレーナーが知らないふりをしそうな部分をあげた名前。トレーナーであれば少なからず心当たりはある部分で、バトルをしても勝てないポケモンはいないとは言い切れない。その代りにセラピーポケモンに向いていたり、または介助ポケモンに向いているという特性がある。

「ダンデ、名前に見えてもらえよ。あとオレ様も見たい」
「そうだな、うん。それがいい」
「………あれ、仕事をさせられる?」
「それなりに報酬は出すぞ!」
「まあまあ、いいじゃねえか。困っているポケモン助けると思ってよ」

まあまあ、まあまあ、まあまあまあまあ。と押されるがままに名前はそのポケモンがいると言う部屋に案内される。出入口付近でそこの担当者に「すみません、その道のプロの方がいると聞いて」と頼まれてしまった。
ただ間違っているのは名前はその道のプロではない。言えばその担当者に近い飼育保護をしている立場の人間だ。その担当者が勘違いしているのか間違った情報を渡して勘違いしてしまったのかは不明だが、名前は訂正暇もなくポケモンに会された。

「ガラルのニャースですか」
「どうにも苛立っていて言う事をきいてくれないと。他のニャースはそうではないらしい」
「ニャースまでレンタルするのか?」
「バトルタワーは出会いの場でもあるからな。色んなポケモンを置きたいんだ」
「…ん?」

何か気づいた様子の名前。
ダンデにニャースはご飯を食べているかと聞けば食欲はあまりないらしい。ボールに戻してセンターで回復しても変わらないそう。

「ドクターには」
「診せようにもあの様子ではどうにも」
「その道のプロにまず見せましょう…私はドクターではありません」

荷物からポケモン用のグローブをだして、一応の対策をする。
相手は鋼タイプを持っているので爪や牙は鋭いだろうし、名前自身が怪我をしては元も子もない。手持ちを出して接触しては逆に刺激になって攻撃性を出しては駄目なので一人でまず試みる。一応はモンスターボールに入ったポケモンだ、野生とは違う。

「ニャース、どこか痛むんでしょう?見せてくれる?」

部屋の隅にちぢこまり、ピャーと甲高く鳴いたニャース。苛立っているのだろう、その目は酷くギラギラとして名前たち人間を睨んでいる。

「恐いことも、痛いこともしない。このグローブはね、アナタが鋼タイプだから付けているだけ、その立派な爪や牙は私には危なくて。これはアナタを傷つけるものじゃないよ」

ほら、と一度つけていたグローブを取り、その下には人間の手がある事見せる。
しかしそれでも警戒しているニャース。名前にしてみれば当たり前ではある、名前とニャースは初対面でバトルをしてゲットしたわけではない。赤の他人も良い所だ。野生であればまだ何度も保護の名目で対処してきたが、これはワケが違う。他人のポケモンをどうにかしろというのだ。

「仕方ない。すみませんがルカリオのボールとってください」
「ん?ああこれか?」
「ありがとうございます。ルカリオ、ニャースを説得してみて」

ポンと音を立ててボールから出てきたルカリオに頼んで説得を試みる。
リーダーの様な事をしていたのだからそういう事に関して心得があると思っての事。同じ鋼を持つポケモン同士でもある。
ルカリオとニャースの押し問答、ではないがお互いに話た末、ゆっくりとだが名前に寄ってきたニャース。敵意はないと言う事を示すために再びルカリオをボールに入れてダンデに渡す。
そしてグローブを再び装着して体を触って行く。

「ニャース、口開けて。大きく…もう少し、そうそう。上手。………あ」
「どうした?何かわかったのか?」
「ニャース痛いと思うけどそのままね、今取るから……」

痛みが強くなったのか、抵抗したニャースが思わず名前のグローブが覆っていない部分の腕を引っ掻くと血がだらりと流れる。しかし名前は手を止めずに進める。

「……っよし、取れた。ダンデさん、この子をセンターで回復してあげてください。これで傷も塞がるから食欲も戻るし大丈夫だと」
「だが君の腕が…」
「大丈夫です。いつからかわかりませんが奥歯に小さな木の実の破片が刺さっていて痛みがあったようです。出血があるのでセンターでそこを治してもらえれば。小さくて見つけられなかったんだと思います」
「ダンデ、そいつセンターに連れて行け。名前はこっちで手当てしておくからよ」
「おあ…」

ひょいと引っ掻かれた腕を掴んで上にあげるキバナ。その際傷口には布を当てて。
それを見たダンデはニャースをボールに入れてセンターへと向かい、名前はそれを腕を上げられたまま見送った。

「あ…服破れてしまいました…」
「服はいいんだよ!ほら、医務室行って駄目なら病院行くぞ」
「荷物…」
「んなもん後で運んどいてやるから!」
「ポケモン…」
「後だ!」
「ルカリオ…ダンデさんに渡したまま…」
「…………今は自分の事を考えような」

思った以上に深かった傷に、ここでは駄目だと言われて病院に送られた。
その際に荷物はスタッフの人が運んでくれ、ルカリオ以外は名前の手元に戻ってきた。

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